北野武監督、日本映画界をぶった斬る!「宮崎駿なんて本当に嫌いなんだけど、認めているよ」、漫画原作の実写化が多いのは「客が入るから」
北野武監督が、第27回東京国際映画祭の開催にともない新設された第1回“SAMURAI(サムライ)賞”を受賞。10月25日に授賞記念のトークイベントが六本木アカデミーヒルズで開催されて北野監督が登場し、大胆な発言で日本映画界に斬り込んで会場を大いに盛り上げた。
比類のない創造性を持ち、新しい映像表演を切り開いてきた映画人の功績をたたえるために新設された“SAMURAI(サムライ)”賞。北野監督は「漫才の賞と映画の賞、あと前科までもらっているのは俺くらい」と北野節で挨拶。PFF(ぴあフィルムフェスティバル)、日本学生映画祭で賞を受賞した若手監督8人も参加して、彼らの質問に答えるかたちでトークショーを繰り広げた。
日本映画界の未来を探るなかで、北野監督は「日本映画の最低なところは、映画製作会社が劇場と関連しているところ。日本のアカデミー賞で推薦された作品しか、アメリカのアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされない。だから自分の映画は、一回も推薦されたことがない」と不満たっぷり。
さらには、日本アカデミー賞最優秀賞は大抵が大手3社の持ち回りで決まっていると話し、「アカデミー賞会員が選んだっていうけど、どこにいるの?そういうことをやっているから、日本の映画はよくならない」とバッサリ。若手監督たちには、「大手の映画会社に巻き込まれないように」とニヤリ顔でアドバイス。会場も大爆笑だった。
また「音楽でドラマチックに映画を描く人もいるけれど、僕は人間をしっかりと描きたい」と若手監督が思いを打ち明けると、北野監督は「俺はアニメなんて大嫌いで、宮崎駿なんて本当に嫌いなんだけど、認めているよ」とコメント。「自分の頭でいいと思ったことをやればいいんだけど、他の嫌だと思うものも認めなければいけない。余裕のある頭が必要」と指摘していた。
会場からは、漫画原作の実写映画化が多いことについての意見を求められる一幕も。北野監督は「漫画を題材として映画化するのは、客が入るから。それだけ。よくわからない台本にお金を払う勇気のある映画会社がない」とはっきりと語り、「実際、当たった本や漫画を映画化したほうが客が入る。確かに日本はその通りに動いているんで、いくら文句を言ってもしょうがない。自分としては、『そういうものではダメだな』と思えるようないい映画が出てきてほしい」と持論を展開。若手監督をはじめ、映画界にとっても刺激的なトークショーとなった。【取材・文/成田おり枝】