主演女優はホームレス&ジャンキーの女の子!東京グランプリは壮絶な実体験描く『神様なんかくそくらえ』
第27回東京国際映画祭が10月31日に閉幕。コンペティション最高賞にあたる東京グランプリには、主演女優のアリエル・ホームズの実際の体験談をもとに映画化した『神様なんかくそくらえ』が輝いた。クロージングセレモニーの後には、TOHOシネマズ六本木ヒルズで受賞者会見と審査委員による総評が行われ、ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟監督とともに、アリエルが出席。「ホームレスだった女の子が、今こうして皆さんの前に立っている。クレイジーですごいこと」と喜びを語った。
『神様なんかくそくらえ』は、ジャンキーとして生きる若者たちを生々しいリアリズムで描く物語。アリエルの実体験に基づくもので、ドラッグに依存する自分自身を演じる彼女の振る舞いが真に迫る。監督賞とグランプリの2冠を達成したジョシュア監督は「いろいろな苦労があった。この映画をつくることは不可能に近かった」、ベニー監督も「いろいろな犠牲を払った」と声をそろえた。ジョシュア監督は「アリエルに出会えたことはラッキーの一言。これからも女優を続けてほしい」とアリエルにエールを送った。
アリエルは、「N.Yでホームレスをしていた」と映画出演までの生活を述懐。「いろいろな人生があることをわかってほしい。どんな人間の命にも重みがある。誰しもが“ボイス”を持っていて、その声に耳を傾けてほしい」とまっすぐな瞳で語っていた。
観客賞を受賞したのが、吉田大八監督の『紙の月』だ。最優秀女優賞を受賞した宮沢りえは、スケジュールの都合で会見は欠席となったが、吉田監督が「宮沢さんは授賞式で、本当に驚いていて、緊張していた。彼女にとって大きな喜びだったことには間違いがない」と宮沢の様子を報告。観客賞の受賞については、「宮沢さんや俳優たちが見せてくれたパフォーマンスには自信がある。そこを評価していただいのでは」と自己分析。「わかりやすい映画だとは思っていなかったので、見た方が、シンプルに『大好き』と言ってくれるかは自信がなかった。ものすごく励みになる」とその重みを噛みしめていた。
審査委員長を務めたジェームズ・ガン監督は「映画祭の仕事をしていると、『このやろう、なんてヤツだ』と思う人が必ず一人二人はいるもの。でも、今回はいなかった!非常に気があって、仲の良い6人組だった」と審査員のチームワークに大満足。グランプリには「一番、インスピレーションを受けたことが決めてとなった」といい、「すべての作品に愛したい、愛されたいという気持ちが流れていた」と作品群の質の高さに言及していた。【取材・文/成田おり枝】