三上博史、「現場では“何か”がたくさん起きた」
三上博史がWOWOW連続ドラマWで7本目の主演を務める「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」(1月24日スタート)。09年に映画化された『さよならドビュッシー』で「このミステリーがすごい!」大賞(宝島社)を受賞した小説家・中山七里の法廷ミステリーをドラマ化した本作は、『EUREKA ユリイカ』(00)や『共喰い』(13)などの作品で国際的にも評価の高い青山真治が監督を務めていることでも話題だ。
青山監督とは『月の砂漠』(03)以来、おおよそ13年ぶりのタッグとなった三上。撮影前から「また2人で“悪巧み”ができると、モチベーションが上がっていた」と話す。「『月の砂漠』が終わったあとも、たびたび2人で会っては、飲みの席で『次は何をしよう?』と話していたんですけど、まさか連続ドラマでご一緒するとは思いもしなかったですね。最初は驚きもありましたが、青山監督の新たな挑戦になるということで、僕自身もワクワクしたことを覚えています」。
青山監督は本作が連続ドラマ初挑戦(※02年に日本テレビ系『私立探偵 濱マイク』の第6話を1本だけ演出した経験はある)。その注目作が、これまで骨太で社会派の意欲作を次々と世に送り出してきたWOWOWの連続ドラマ枠となれば、盟友である三上ならずとも期待が高まる。
「(WOWOWは)青山監督の才能を遺憾なく発揮できる場だと思っていたので、うれしかったですね。監督って映像を重視するタイプと、芝居の方にのめり込むタイプに分かれると思いますが、青山監督はその2つを絶妙なバランスを持たれている方。役者の僕が言うのも失礼ですが、今回は連続ドラマともあって、そのバランス感覚がより際立ったように思います。法廷という密室が主な舞台なので、画(え)的にハンディキャップが大きいところも、なんなくクリアしてくださいました」。
作品では、過去に殺人を犯したことがある弁護士という難役に挑んだ三上。青山監督に絶大な信頼を寄せる彼は、現場で「細かすぎるほどの微調整を重ねた」と振り返る。「監督と何度も話し合いをしました。目つきひとつ、リアクションひとつで“今のは何だろう?”と思わせる芝居を入れたつもりです。できれば片時も目を離さず見てほしいですね」。
終始、“手応えあり”といった晴れやかな表情を見せてくれた三上。青山監督がメガホンをとると聞くや否や「何かが、起こる!」と、出演者として真っ先に手を挙げたと語るが、その予感は的中したようだ。「何かが起きるように、監督が土壌を作ってくださったことが大きかったです。現場での偶然だとか予期せぬ出来事をあまり取り入れず、自分のプランどおり物事を進める方だと、それが起こりづらいのですが、今回は、その“何か”がたくさん起こりました。とりわけ、最後の容疑者との面会シーンでは、自分で考えもしなかった感情があふれ出してしまって…。青山監督が、確実に映像に残してくれた記録と言いますか――ものすごいシーンになったと思います。原作小説は、続編(『追憶の夜想曲(ノクターン)』)もありますから、気が早いですけど、ドラマの続きにも期待したいところです」。【取材・文/橋本達典】