ティム・バートン監督作のゴーストペインターを直撃!

インタビュー

ティム・バートン監督作のゴーストペインターを直撃!

大きな瞳の子供を描き、1950~1960年代に一大ブームを巻き起こした絵画『BIG EYES』シリーズの作者、ウォルター・キーン。しかし、その絵を描いていたのは、実は彼の妻マーガレットだった…!60年代のアート界に衝撃を与えた実在の事件を、ティム・バートン監督が映画化した『ビッグ・アイズ』が1月23日(金)より公開される。この映画のモデルとなったマーガレット・キーンにインタビュー!

御年87歳となったマーガレット。自身の過去を映画化した本作を見た感想から聞いてみた。「とてもエモーショナルでドラマチックな経験だったわ。あまりにもリアルで、自分自身をスクリーンで見ているような気がしたの。あの頃を再び追体験しているような感覚で、映画を見た後、ショック状態になってしまったわ。でも、そう思えたということは、やっぱり作品が素晴らしいのね。笑えて、泣けて、良い映画ができあがったことをうれしく思ったわ」。

以前から、マーガレットの絵の大ファンで、自身も多大な影響を受けたというティム・バートン監督。マーガレットは、監督について「実に優しくて繊細な方で、とっても良くしてくださったわ」と好印象をもつ。「彼は非常に思慮深いし、あんなに才能あるアーティストなのに、地に足がついている方なの。ティム・バートンについては、いくらほめ言葉を使っても足りないくらい大好きなの」。

マーガレット・キーンに扮するのは、エイミー・アダムスで、第72回ゴールデングローブ賞で見事2年連続最優秀主演女優賞に輝いた。実際にエイミー・アダムスと会って、お互いに意気投合したようだ。「エイミーは優しくて素敵な方。2人とも、ひとり娘の母親でもあるので、お互いに共感できたし、私の信仰や聖書への思いについてもたくさん聞いてくれたの。彼女以外、この役は演じられなかったんじゃないかしら。彼女が表現しているのは、私が当時感じていた感情そのものよ」。

また、長年、夫であるウォルター・キーンのゴーストペインターを務めてきた理由については、時代の風潮が大きかったと振り返る。「女性が男性の後をついていくというのが普通だった時代だから、そのなかで、妻のことをぞんざいに扱うだんなもたくさんいたと思う。もちろんアーティストの世界でもそうだし、ビジネスなど、どのフィールドでも、差別があって、女性が仕事をするのは難しい時代だったのよ」。

ウォルターにずっと嘘をつかれ、ゴーストペインターでいることを強いられたマーガレット。それでも彼女は「彼がいなかったら私の作品は誰にも発見してもらえなかった」と彼への感謝の気持ちを忘れていない。「裁判を始めた頃から信仰心を持ち、聖書を手がかりに彼を許すということに心を向けられるようになっていったの。この世界で私たちは不完全な人間であることを理解していったの。だって、誰だってそうじゃない?だから、彼のことも理解し、今はかわいそうだと思っている」。

なんとも寛容な心の持ち主であるマーガレット。彼女に「憎しみは本当にないのですか?」と念を押すように尋ねてみても「かわいそうだという気持ちはあっても、憎しみは一切ないわ」と、穏やかに答えてくれた。「おそらく彼は現実と乖離してしまい、精神的な心の病気になったというか、きっとそういう状態だったのだと思う。だから、彼にたくさん嘘をつかせてしまうような状況を許してしまった自分に対して、罪悪感を感じているわ」。

映画の公開については、とても楽しみにしていると言う。「この映画が作られたこと自体、信じられないような出来事だったの。こういう形で真実が世に出ることをうれしく思っているわ。とても興味深くてユニークな物語でしょ?実際、かなり実話に近いのよ。世界中の方が見てくださるわけだけど、楽しんで見てもらって、そこから何か真実を得られるような作品になっていると思うわ」。

マーガレット・キーンの印象は、とてもチャーミングで心のきれいなおばあちゃん、という印象で好感度大。とても『ビッグ・アイズ』て展開されるドラマチックで激しい人生を送ってきた人とは思えないが、そういう幾多の困難を乗り越えてきた人だからこそ、美しい年輪が刻まれてきたのかもしれない。事実は小説よりも奇なり。まさしくその言葉どおりの作品だ。【取材・文/山崎伸子】

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