前田敦子、染谷将太との初共演は「羨ましがられた!」
若手実力派俳優の名をほしいままにする染谷将太と女優としての成長目覚しい前田敦子が初共演を果たした映画『さよなら歌舞伎町』(1月24日公開)。歌舞伎町のラブホテルを舞台に、愛が見つからない男女を優しく、かつユーモラスに見つめた群像劇だ。染谷と前田を直撃し、“大人の映画”に挑んだ感想を聞いた。
さまざまな愛を求め、独特のエナジーがじわりと匂い立つ街・歌舞伎町に集う人々。訳アリの男女の悲喜こもごもが鮮やかに切り取られ、なんとも愛おしい映画が完成した。大胆な性描写も含む本作。染谷は、脚本の荒井晴彦から「ピンク映画をやらないか?」という誘いの言葉とともに、本作の脚本を受け取ったという。
「覚悟して脚本を読んだんですが、意外にも登場人物がみんなかわいらしくて驚きました。愛にあふれた脚本だなって」と染谷。「廣木(隆一)監督も荒井さんも、いつかご一緒させていただければ嬉しいなと思っていたお二人。それだけでも嬉しかったし、歌舞伎町を題材にするというのもとても魅力的だと思いました」と意気込みを明かす。“大人の映画”への参加に、なんの躊躇もなかったようだ。
一方の前田も「断る理由はないですよね」とオファー時の心境を笑顔で述懐。「廣木監督に呼んでいただけただけでもう、『是非、出たいです!』って」。大の映画ファンとして知られる彼女。『娚の一生』(2月14日公開)『ストロボ・エッジ』(3月14日公開)など待機作が続く廣木監督に信頼感たっぷりで、「いろいろなタイプの廣木監督がいるので、どれが本当の廣木監督なんだろうって思うんです。でも私、廣木監督がピンク映画出身だって知らなくて!それを知ったときに、今回、一番、素の廣木監督に近い作品に出られるというのは、とても嬉しいことだなと思いました」と目を輝かす。
そして前田が、「断る理由がない」と思った理由がもう一つ。「相手役が染谷さんだって、決まっていたので。こんな魅力的なことはない」と染谷に顔を向け、「すごい羨ましがられる!染谷さんを『好き』っていう人がいっぱいいるんだよ!(AKB48の)メンバーの子たちに会ってもそうだし、いろんな人に会うたびに『羨ましい』って言われて。若い子たちが『かっこいい!』っていう人だし、きっと年上の人たちからも『かわいい』って言われる存在ですよね。すごい言われているよ、知らなかったでしょ」と楽しそうな表情。
染谷は「そうなんですか?それは意外ですね。僕も言われましたよ。お前があっちゃんと共演するのか。なんでお前が恋人役なんだって」と照れ笑い。劇中では倦怠期のカップルを演じた二人だが、お互いに「自然体でいられる存在」と息もピッタリだ。染谷は「すごくフラットな方」と前田の印象を告白。「いい意味で気をつかうことなく、そのままの流れでお芝居ができた。僕はそういうのが好きなので、すごくリラックスしてやらせてもらいました」。
染谷が演じるのは、一流ホテルマンと周囲に偽るラブホテルの店長・徹役。前田は、ミュージシャンを目指す女性・沙耶役を演じる。将来に悩む大人たちを演じたが、「沙耶がもがく心境に共感できた」と前田。「やりたいことがあるなら、もがいて当たり前だと思う。それくらいなにかに必死になるっていうのは大事なことなんじゃないかなって」とまっすぐな瞳を見せるが、自身は「壁があるならぶつかっていきたいタイプ。当たって砕けはしないけれど、当たって次に行きたいタイプ」と分析。
2012年にAKB48を卒業、女優道を邁進している彼女。次々へと訪れる新たな役にも、「負けず嫌いなんです。気になるものはなんでも見たいじゃないですか。そういう欲張り精神です」と体当たりで挑む。溌剌とした笑顔で、力強く語る姿が実に美しい。染谷に「もがいた経験」について聞いてみると、「僕は葛藤する役を演じることが多いんですよね。自分の人生よりも自分が演じる役の方が遥かに葛藤している。なんかそこでもう、もがききっちゃっているのかもしれませんね」とニッコリ。その人の人生を身も心も演じきる染谷。「天性の役者」と感じさせる一言だった。【取材・文/成田おり枝】