染谷将太&前田敦子、ラブホテルでお客さんと出くわす
映画の中で、“街”が大事な役割を担うことがある。廣木隆一監督最新作『さよなら歌舞伎町』(1月24日公開)は、新宿・歌舞伎町を舞台にした、リアルで温かい群像劇だ。ラブホテル独特のギラギラとした灯、室内の閉塞感。そこで繰り広げられる大人たちの愛が、鮮やかに映し出される。主演の染谷将太と前田敦子を訪ね、歌舞伎町という街への思い出。撮影秘話を聞いた。
前田は「ピュアなラブストーリー。女性にも是非見てほしい」、染谷も「愛おしく思ってしまう人が、愛おしく思ってしまう出来事を繰り返す映画。最後は心が温まって、清々しい気持ちで家に帰れる映画だと思う」というように、濃厚なシーンもある一方、清涼感あふれる物語に仕上がった。
廣木監督を信頼しきりの二人だが、「温かい現場だった」と撮影を振り返る。染谷は「厳しいときはすごく厳しくて、現場は常に緊張感があるのに、なぜかリラックスできる不思議な魅力がある。すごく包容力のある現場でした」とコメント。前田は、ギターの弾き語りにもチャレンジしたが、「すごく時間をかけて向き合ってくださった。『もっと時間をかけてもいいよ』とかなり待ってくださって」と廣木監督に感謝。「廣木監督はみんなとすごくコミュニケーションをとってくれるんです。一人ぼっちになる感じは絶対にない。優しい人柄が出ている現場でした」。
新宿・歌舞伎町で、営業中のラブホテルを使用して撮影を敢行。ラブホテルの店長役の染谷は「僕が従業員の控え室から出て行くシーンで、バッと飛び出したらお客さんと出くわしてしまったことがありましたね。僕は従業員の格好をしていたので、『失礼いたしました』と言って(笑)」と、ラブホテルならではの瞬間もあったよう。歌舞伎町という街の魅力について聞いてみると、「どこを切り取っても絵になる街。映画的な街だなと思いました」と染谷。
前田は「自ら進んで行く場所ではないかなと(笑)。監督さんなど行きつけのお店がある方も多くいらっしゃるので、大人の方に連れて行ってもらう場所という感じですね。太陽とはまた違った、独特の明るさがある場所だなと思います」とうなずき、「先日、取材の撮影で『新宿ミラノ座』に行かせてもらったんです!こんな素敵な場所があったんだ!って驚いて。歌舞町も変わっていくようで、さみしい気持ちがしました」。染谷も「真っ白になった表看板と一緒に、写真を撮りました。最後の日は『E.T』をやっていたみたいだよね」と2014年12月に閉館した新宿ミラノ座、日々変わりつつある歌舞伎町に思いを馳せていた。
2015年、最初にスクリーンに登場するのが“大人の映画”となった二人。最後に今年の抱負を聞いてみた。染谷は「これは毎年言っていることなんですが、心身ともに健康にやっていきたいなと、切に願っています」と回答。前田は「もうちょっと一人の時間を増やしたい。今年は、もう少し静かにしていきたいですね。一人で静かにいられる時間をつくって、大人になりたい!」とニッコリ。まずは、大人たちを優しく愛おしく見つめた本作で、彼らの2015年のスタートを見届けてみては。【取材・文/成田おり枝】