中村獅童&小西真奈美が明かす、理想の夫婦像とは?
パラパラ漫画家として活躍する鉄拳が2012年に発表した「振り子」。このたび、中村獅童と小西真奈美を主演に迎えて実写映画化が実現。映画『振り子』となって2月28日(土)より公開される。
一組の夫婦の出会いから結婚、人生の転機、やがて訪れる死までを描き切り感動を呼んだ物語。夫婦役を演じた獅童と小西の目には、この一組のカップルがどう映ったのか。理想の夫婦像を語り合ってもらった。
本作の主人公・大介とサキの出会いは、不良学生にからまれたサキを大介が助けたことに始まる。それを機に、大介に一目惚れしたサキは彼に猛アタック。めでたく二人は結婚するが、大介がオープンさせたバイクショップが倒産、失意の大介が浮気に走るなど、人生には数々の困難が待ち受ける。
獅童は、演じた大介の印象をこう語る。「まっすぐで、不器用で、ちょっとバカでね。人間味あふれる人だと思いました」。一方、そんな大介を笑顔で包み込むサキを演じた小西は、「大さん(大介の愛称)みたいな人は好きですね」と目を輝かせる。
「大さんって、何かあるたびに『おい、サキ!』ってサキのことを呼ぶんです。悲しみも喜びも一緒に分かち合おうとしていて、大さんの人生には、必ずサキがいたんだということがすごく感じられた。とっても不器用だけど、それはサキを苦しめようと思ってやったことではなくて、もっと自分の夢にサキを乗せていきたいのに、大さんは不器用だからこそそれがうまくいかない。すごく愛おしい人だと思いました」。
まさに“昭和の男”といったタイプの大介。頑固で勝手とも思える夫を笑顔で支え続けるサキだが、小西は「サキは耐え忍んだり、我慢しているわけではないと思うんです」とニッコリ。「大さんのことが好きだから一緒にいて、長い時間の中で大さんのまっすぐさを感じているからこそ、何があってもサキは途中で投げ出さない。大さんと一緒に乗り越えて行こうという選択をしていけるんだと思うんです」。
獅童も「あんなにひどい失敗をして、浮気もして。そんな夫だったら普通は妻も出ていくよね。でもサキは出ていかない。それはなぜかというと、大介の人柄やどこか母性をくすぐるような、男としてのかわいさだったり」とうなずく。「大介をただのひどい男にしないためには、脚本に描かれていない部分を大事して。二人が、そして家族がどのように過ごしてきたのかというのを想像しながら演じました」。
100分という限られた上映時間の中で、家族の醸し出す空気感をしっかりとスクリーンに刻み込んだ。一体、どのように作り上げていったのだろうか?小西は「撮影現場では、空き時間ができたら必ず獅童さんの近くにいようと思っていました。近くにいると同じものを見たり、他愛もないことを話したりすることができる。そうするとカメラ前に立ったときもやっぱり違うんですよね。そういったことで二人が長い時間一緒にいたんだという雰囲気が出せるといいなと思いました」。
印象的だったエピソードを聞いてみると「一緒におでん屋さんに行きました!獅童さんに美味しいところがあると教えてもらって」と小西。獅童は「ロケをした場所には、街並みにも昭和の雰囲気があって。そこにおでん屋さんがあって、小学生が『ただいま!』っていう声が街から聞こえてくるんです。そのお店のご夫婦も本当に人柄のいい方で。それ以降すごく仲良くなって、未だに僕の芝居を見にきてくれたり、誕生日にうちに来てくれておでんを振舞ってくれたりするんです」と微笑む。優しい街の風景も、家族を作り上げる大きな助けとなったようだ。
どうしようもないけれど、目が離せない。そんな愛すべきキャラクターに魂を吹き込んだ獅童。小西は獅童の演じる大介を「すごく素敵でした」と絶賛する。「怒るときも笑うときも豪快!大さんを筆頭にみんなでバンザイをするシーンがあるんですが、あそこは実は脚本にはないシーンで。獅童さんがバンザイをしたら、私もイエイ!とばかりに乗っかって。現場では獅童さんや大さんのエネルギーに突き動かされていた」と楽しそうに述懐。
獅童も笑いながら、「子どもにも『お前もバンザイやれ!』って言ってね。本当にいい家族だよね」と目を細める。続けて「理想の夫婦や家族って、やっぱり主人にいいことがあれば、嫁も同じように喜んだりすることで」と理想の夫婦像に言及。「いいことがあれば、家族でバンザイしたりね。もちろん悲しみも分かち合うし、他愛もない喜びや些細なことを分け合えることが大事。あのバンザイのシーンは、僕もとても好きなシーンです」。
昭和から平成へと移り変わる時代を、健気に生きた一組の夫婦。彼らの姿は、誰しもがどこか自らを重ねられるもの。大切な人の顔を思い浮かべ、じんわりと涙があふれる温かな感動作となった。【取材・文/成田おり枝】