獅童が語る亡き両親への思い。小西真奈美は感謝を実感
「時間は取り戻せないし、時間はお金で買えない」。中村獅童が瞬間、瞬間を全力で生きる理由を明かした一言だ。小西真奈美は、日々の中で「感謝の気持ちをきちんと伝えていきたい」とコメント。1分1秒を大切に過ごすことを教えてくれる映画『振り子』(2月28日公開)に主演した獅童と小西を直撃し、限りある命を生きる上でのモットーを聞いた。
原作は、お笑い芸人を経て、パラパラ漫画家として一世を風靡している鉄拳の同名漫画。2012年に発表するや、動画再生回数300万回以上を記録し、世界的ロックバンド「Muse」の公式PVにも採用。人生の荒波に翻弄されながらも健気に生きる夫婦の姿が、日本のみならず、世界中で感動を呼び続けている。
獅童は「食い入るように動画を見ましたね。胸に突き刺さるものがあって『すごいな』と思っていました」と振り返る。劇中で、小西演じる妻・サキは常に微笑みを絶やさず、獅童演じる夫・大介を支え続ける。事業の失敗や浮気など、サキに苦労をかけっぱなしの大介だが、サキが脳梗塞で倒れて初めて、サキの愛の大きさを実感するのだ。
「ちょうど、僕の母が亡くなってすぐの頃にこの映画のお話をいただいて」と獅童。「父もその前に亡くなっていますが、親が亡くなってみると、あのときこうしておけばよかったと思い返すことがたくさんあって。そういうさなかにいただいたお話だったので、そのときの自分にはすごくしっくりきて。共感できる部分も多かったです」と、運命的なことを感じて脚本を読んだという。
小西も「素晴らしいと思いました」と動画を見て感動したという。そのパラパラ漫画を100分の映画に仕上げた脚本には、「またその脚本が素晴らしくて」と目を輝かす。「鉄拳さんのパラパラ漫画には、人生の様々な出来事が短い中にぐっと凝縮されている。私もいろいろと想像しながら見ましたが、人間の想像力というのはたくましいので、それを超えるのって難しい。でも映画の脚本を読んだら、もうこれを信じてやれば素晴らしい作品になるなと思えるくらい、すごく力のあるものでした」。
夫婦にはうれしいこと、悲しいこと、様々な出来事がふりかかるが、中でも娘・心晴の誕生は特別な瞬間。成長した心晴役をSKE48/AKB48の松井珠理奈が演じている。獅童は「僕は初めてご一緒したんだけれど、お芝居にも一生懸命で。ものすごく真剣に取り組んでいて、お芝居をやっていきたいんだなと感じて。いいなと思いました。物怖じしないし、明るいしね」。
小西も「私も初めてお会いしたんですが、すごくしっかりしていて。17歳なんですか?ああいうしっかりとした娘がいるから、サキは大さん(大介の愛称)のことを待ち続けられたのかもしれません」と、松井の頼もしさに感心しきりだ。
1分1秒を大切に過ごすことを教えてくれる本作。歌舞伎役者として日々舞台に励み、映画・ドラマにも精力的に出演する獅童。エネルギッシュな姿に惚れ惚れとするが、「歌舞伎だと25日間、毎日同じことをやるんだけれど、その日その日、出会うお客様とも一期一会。だから何事にもその瞬間、瞬間を全力で生きたい。両親が亡くなった今だからこそ、より一層そういう気持ちが強くなったのかもしれません」とまっすぐな眼差しを見せる。
三池祟史監督、宮藤官九郎、市川海老蔵とタッグを組んだ新作歌舞伎をはじめ、新たなことにもチャレンジし続けているが「とにかく後悔したくないんです」と告白。「そりゃあ、走り続けていると失敗することも間違えることもある。でもチャレンジ精神というのはいくつになっても忘れたくない。僕は失って怖いものは何もないんです。プライドもキャリアも捨てる覚悟でやらないと、チャレンジできなくなる。人と違ったことをやると否定もされるけれど、否定を恐れていたら開拓はできないから。一度きりの人生ならば、やっぱり時代を切り開いていきたいし、役者としてもっともっと、死ぬまで成長したい」。
小西も「日々、一日一日がすごく大事」とうなずく。「身近にいる人や会う機会の多い人って、ついまた会えるだろうと思ってしまいがちなんですが、考えてみるとまた会えることって、とても素晴らしいこと。その人たちに支えられていると感じることが、私にとっての原動力になっています。なので、なるべく感謝の気持ちは日々、きちんと伝えたいと思っています」。【取材・文/成田おり枝】