『バケモノの子』、豪華声優陣と海外配給への熱い思い
『おおかみこどもの雨と雪』(12)の細田守監督作『バケモノの子』が7月11日(土)に公開される。先日行われたブリーフィングでは、本作を手がけるスタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーが、役所広司、宮崎あおい、染谷将太たち豪華声優陣15人の配役や、映画の内容、進捗について発表した。
『バケモノの子』は、人間界の渋谷と、バケモノたちの棲む異世界を舞台にして、バケモノと少年の奇妙な師弟関係や、親子の絆や淡い恋愛などを描く冒険活劇だ。
「前作もそうですが、細田監督作は、共に成長して新しい価値観を手に入れていくという話です。みんなで子どもの成長を見守っていく、賛歌であること=未来を肯定するというエンタテインメント作品なんです」と齋藤プロデューサーは話す。
声優陣は、最強のバケモノ・熊徹役に役所広司、熊徹と交流する九太役の少年期に宮崎あおい、青年期に染谷将太、ヒロイン・楓役に広瀬すず、その他、山路和弘、宮野真守、山口勝平、長塚圭史、麻生久美子、黒木華、諸星すみれ、大野百花、津川雅彦、リリーフランキー、大泉洋と、15名のキャスティングが明かされた。
齋藤プロデューサーによると、いままでは、俳優や声優に関係なく、オーディションで決めてきたが、今回は、少し違うアプローチも試みたようだ。
たとえば、やさしさと豪快さが同居した熊徹の役所については「新しい家族の形を問いかけていくという繊細なキャラクターを演じられるのは、役所さんしかいないと思いました」と、決め打ちでオファーした。
宮崎と染谷については、前作『おおかみこどもの雨と雪』でその実力は確認済みだが、他のキャストについても、才能を結集させた顔ぶれになったと齋藤プロデューサーは太鼓判を押す。「才能の連鎖ですね。九太の声が、あおいさんから染谷くんに変わっていくことについても、僕らはその流れみたいなものを感じてしまうんです。広瀬すずさんのオファーもそうですが、世代を超えての才能に集まってもらいました。アニメ業界だけではなく、日本映画界の才能が集まり、みんなでエンタテインメント作品を作るといった配役になったのではないかと思っています」。
『おおかみこどもの雨と雪』は90以上の国と地域で配給されたが、『バケモノの子』の公開規模は、それ以上の広がりを見せる。海外セールスは、日本でも大ヒットした『最強のふたり』(11)など、良質のインディペンデント映画を手がけているフランスの大手映画制作会社ゴーモンと組んでいる。「スクリーン数などの公開規模は、前作の倍以上になります。現地配給会社が、単館系からメジャー系になるイメージでしょうか。フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、韓国等の主要各国での公開もすでに決定しています」。
宮崎駿監督が長編制作から引退宣言をして以降、細田守監督にかけられる期待度はいままで以上だ。最後に、齋藤プロデューサーに、スタジオ地図の今後の展望について聞いてみた。
「僕は30代後半ですが、子ども時代に、東映まんがまつりなどに、お世話になりました。夏に、親やおじいちゃん、おばあちゃんといっしょに映画館へ行く。子どもと大人が一緒に楽しめる映画に対する社会的な役割に、ある種の憧れをもっています」
「宮崎監督や高畑監督たちは、55年間くらいその歴史を担ってこられました。でも、それって、どこかの監督やプロデューサーだけとか、スタジオだけで、その流れをつないでいくことはできないんじゃないかと思っています」
「今年は、細田監督作があり、どういうふうに評価をしてもらえるかはまだわからないけど、その一端を担うというか、少しでもお力になれればとは思っています。でも、来年はないから、別の作品が出てくるわけでして。ただ、みんなで、やっていこうという気持ちがないとダメなんです」
「とにかく、僕らとしては、今年はちゃんと責任をもってやろうと思っています。また、ちゃんと見ていただき、次も作る機会をいただけるのなら、スタジオ地図としても、細田監督としても、できるかぎりやり続けたいとは思っています。だから、僕としては、細田監督を支えながら、良い作品を作っていければと」。
『バケモノの子』は、強豪映画がラインナップする夏休み映画戦線で、どこまで大暴れしてくれるのか?そして、今後世界の映画祭で、細田守という名前が、どこまで轟いていくのか?いまから胸が躍る。【取材・文/山崎伸子】