筧利夫と真野恵里菜が語る“押井守監督”
アニメ史に残る伝説的作品を実写化するプロジェクト『THE NEXT GENERATION パトレイバー』。
2014年4月より上映を開始した全7章シリーズを経て、その到達点とも言える長編劇場版『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』がいよいよ5月1日(金)より公開となる。押井守監督、筧利夫、真野恵里菜を直撃した。
2013年6月にクランクイン、撮影には約半年間の期間を要した。筧は「やっとここまでたどり着いた」と感慨深げに語り、「そしてここはゴールではない」とキッパリ。
「押井監督の作品ですから、日本国内のみならず海外の方にも見てもらいたい。そういう意味では、長い旅路のスタートにきたなという感じ」と意気込み、「ロボットが出てくる警察の話。日本にはないものになっている。やっと日本側から反撃できる作品ができた」と力強く語る。
真野も「この世界に自分が入れたことが幸せ。公開初日の舞台挨拶では、押井監督の笑顔が見たい」とにっこり。撮影期間中も押井監督の笑顔がモチベーションとなっていたそうで、「隊員たちでいつも言っていたのは、自分たちにはネームバリューもないけれど、こうやって選んでいただいたからには、しっかりと『このメンバーでも作品をつくれるんだぞ』ということを見せたい。そして、何より押井監督がずっと愛してきた作品がいよいよ実写になるので、『押井監督の笑顔が見たい』と常に話していました」。
押井監督は「お安い御用ですよ」と楽しそうに笑い、「今日、真野ちゃんに会ったら全然キャラが変わっちゃっているので、それだけ時間が経ったんだなと思う。もはや少女ではないですよね」としみじみ。真野によると「今は撮影した頃とは体重も3、4kg違いますね。髪も伸びました」とのこと。
本プロジェクトの初期はというと、真野はアイドルグループ・ハロー!プロジェクトを卒業して、本格的に女優として歩き始めた頃だった。「キャスト発表される当日の朝は、怖くて怖くて仕方がなかった。お腹が痛くなっちゃったんです。もともと人気のある作品だし、どうしてもいろいろな声が入ってきてしまう。とても不安でした。でも押井監督が私を選んでくださったし、監督の『OK』という言葉を聞くたびに、プレッシャーが一つ一つほどけていきました」。
押井監督に対しては「安心感を与えてくれる方」と信頼しきり。半年間、同じ役を演じるという経験も初めてだった彼女。明という役柄を演じきって、変化はあっただろうか?「お芝居をする上で、根拠のない自信がつきました(笑)。今までは監督さんに言われたことをこなすことに一生懸命だった。だんだんと、『明ってこうなんじゃないか』と意見が言えるようになりました。そういうことは初めてでした」。
明はまっすぐな太陽のような女の子だ。真野は「明を演じたことで、私自身も明るくなれたと思います」と声を弾ませる。「明が明るい女の子だったこともそうですし、『パトレイバー』が終わってからもいろいろと過酷な現場もあったのですが、半年間の『パトイレバー』の撮影を乗り越えられた自信や達成感、充実感があるので、『大丈夫!』と思うことができました」。
本作のキーマンとなる後藤田隊長を演じた筧は、「押井作品を研究して臨んだ」というが、「押井監督は、自分の作品を500%作る方。今回の作品は、その本意であり、ど真ん中のものになると思う。お手伝いさせてもらえて光栄ですよ」と、感無量の面持ち。押井ワールドに飛び込んだことで、改めてその魅力を実感したそうだ。「僕なりに思う押井作品の魅力は、画角。これはアニメでもそうですが、実写でもそう。あとは未来感の予想ですね」。
役者陣から絶大な信頼感を寄せられた押井監督だが、「役者さんにずいぶん助けられた。スタッフもそうだけれど、監督っていろんな人に助けてもらわなければできないものだから」と感謝の言葉を送る。一年間かけて全7章のシリーズを上映、その後、長編劇場版を公開するという前代未聞の試みにチャレンジしたが、「日本ではまず成立しない企画。達成感はありますね」とニンマリ。
「今、世の中には“失敗したくない病”が蔓延している。せめて映画くらいは博打したいよね。ちゃんとこういうやり方もできるんだということを証明できたらいいなと思っていて。今回、どこに持っていっても恥ずかしくないクオリティのものが実現できたと思っています」。【取材・文/成田おり枝】