大泉洋『駆込み女と駆出し男』の妊娠騒動の裏話を語る
井上ひさしの時代小説「東慶寺花だより」を原案に、『わが母の記』(11)の原田眞人監督が時代劇に初挑戦した『駆込み女と駆出し男』(5月16日公開)。本作で、軽快な丁々発止のやりとりを見せているのが大泉洋だ。完成した作品を見て「原田監督は天才だと思った」と激賞する大泉にインタビュー!
本作は、江戸時代の駆込み寺を舞台に、離縁調停人と、ワケあり女たちが繰り広げる、可笑しくも悲しい人情エンターテインメント作品だ。大泉は、御用宿の柏屋に居候する医者見習い兼駆出しの戯作者・中村信次郎役に扮した。
原田組といえば、1シーン1カットの長回しを多用することで知られているが、大泉はその撮り方をとても楽しんだようだ。「1シーンでカメラを止めないから、気持ちが途切れない。原田さんは、つながりとかもあまり意識しなくて良いと言われるので、そういうことを気にせずに、気持ち良く演じられるんです」。
1シーン1カットの撮り方を大泉が初めて経験したのは、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)の大友(啓史)組だった。「大友監督も、カメラを据えるのではなく、お芝居の勢いをとにかく大事にして、1カットを止めずに撮るというやり方でした。もちろん、最初は面食らいましたけどね。原田監督も、ルールは1つだけ。どんなに間違っても芝居を止めないということでした。その分、1つのお芝居を何回もやらなければいけないので、体力的にはきついけど、すごく楽しいです」。
劇中で、爆笑してしまうのが、男子禁制の駆込み寺で起こる、まさかの妊娠騒動事件だ。院代・法秀尼の命を受け、大泉演じる信次郎は、騒ぎを起こしたおゆき(神野三鈴)を診察することになるが、患者と目を合わせることも許されず、困惑しながら触診する羽目になる。
この信次郎と、「ああ~」とオーバーリアクションで返すおゆきのやりとりがなんとも滑稽で笑いを誘う。大泉は「あのシーンは私と神野さん以外は、笑って撮影にならない感じでした。原田監督でさえ、『カット!』と言った後、涙を流して笑っているんですから」と苦笑い。
戸田恵梨香は、信次郎の助手のように、痛みで暴れるおゆきを押さえつける役どころだが、現場で2人のやりとりを見て、つい爆笑してしまったと舞台挨拶でもらしていた。大泉によると「戸田さんなんて、神野さんに蹴られて飛んでいったのですが、なんと自分からカメラのフレームから外れるところまで飛んで行き、思い切り笑ってから戻ってくるんですよ(笑)。さすがです!」。
仕上がった『駆込み女と駆出し男』、軽妙でありながら、しっかりと趣もある時代劇となっている。大泉は「時代劇は、もう少しゆっくり進むというイメージでしたけど、セリフ回しや展開だけではなく、編集のテンポもものすごく早かったので、びっくりしました。骨太で重厚感のある映画になっています」と太鼓判を押す。原田監督ならではの、新しい時代劇をとくと堪能していただきたい。【取材・文/山崎伸子】