綾野剛、沢尻エリカと演じた恋は「ピンク色」

インタビュー

綾野剛、沢尻エリカと演じた恋は「ピンク色」

綾野剛と沢尻エリカ。強烈なオーラとエネルギーを発する二人が、映画『新宿スワン』(5月30日公開)で見せるのは、ギラギラとした街で生まれたとびきりピュアな恋物語だ。“歌舞伎町流”の王子と姫を体現した二人の目には、お互いがどのように映っていたのだろうか。

鬼才・園子温監督が和久井健の同名コミックを映画化した本作。スカウト稼業に足を踏み入れた主人公・白鳥龍彦(綾野)が、熾烈な世界で成長を遂げていく物語だ。沢尻が演じるのは、龍彦と運命の出会いを果たす風俗嬢のアゲハ。綾野は「現場がみんな恋をしていた」と沢尻のアゲハを絶賛する。

「僕にとって彼女は女優じゃなくて、役者」と語る綾野。「文言で何かを変えるつもりはないけれど、それくらい役に対する姿勢が根本的に違う」と話すが、その姿勢をひしひしと感じたシーンとして、歌舞伎町を龍彦とアゲハが疾走するシーンをあげる。

風俗店の店長に痛めつけられたアゲハが、下着姿に裸足のまま、龍彦と手に手をとって新宿のど真ん中を駆け抜ける印象的なシーンとなった。綾野は「歌舞伎町を500メートルくらい、裸足で下着に近い格好で走っていたわけです。道に何が落ちているかわからない。でも沢尻は『え、裸足?』という顔を一切しない。『アゲハだったらこうするでしょう』ということを、圧倒的に優先するんです」と述懐。

さらに綾野が「女優さんだったら、気にする人も絶対にいると思うんです。でも、僕らや現場が気を遣おうとしても、彼女自身が平気だから。本来あるべき姿を体現している。それにはすごく助けてもらいました」と信頼感を吐露すると、沢尻は「私は役にぶつかっていくタイプなんです。意識しているわけじゃないんですけどね。気がつくといつもそうなっている」とふわりと微笑む。

「純粋な風俗嬢」という難役を透明感とともに演じきった沢尻だが、綾野は「現場がみんなアゲハに恋をしていた。かわいらしかったです。『ヘルタースケルター』の時とは真逆の役だよね」と惚れ惚れとしながら、2012年の共演作を振り返る。すると、沢尻は「本当に、お互いが真逆の役だからね」と楽しそうに笑い、「だって私、『ヘルター』の時の綾野くんの印象って全然、覚えてない」と驚きの一言をお見舞い。

綾野も「奴隷だったからね」と笑うが、その言葉通り、『ヘルタースケルター』では主人公・りりこ(沢尻)に翻弄される男として、綾野が出演していた。沢尻が「役として全然、何とも思っていないから、しゃべってもいないような気がする」と綾野を見ると、綾野も「しゃべっていないね。沢尻がやった役も、とても自分が話しかけられるような役じゃなかったから。遠くで見ているような感じで、僕は奴隷のようでした。されるがままで、記憶がなくて当然」と、役にどっぶりと浸かっていたゆえ、前回の共演時は会話もなかったそう。

一方、本作の共演で沢尻は「私は、龍彦に恋をして救われる役だったので、現場に行くことが本当に楽しくて。本当に、毎回ウキウキ、ワクワクしていたんです。この作品を撮っている間、常に楽しくて、終わってほしくないくらいの気持ちでした」と恋心を胸に、綾野との共演を心から楽しんだ。

スカウトマンと風俗嬢の恋。「二人の恋の印象は?」と聞いてみると、綾野は「美しいかどうかはわからないけれど、ちゃんと人間やっているなと思いました。ちゃんと人と向き合っている」と力強く語る。龍彦とアゲハの過ごした時間は「とにかくこの人を幸せにしたい、彼女が笑っている時間を1秒でも多くしたいと考えていた」。また「僕自身にとっても今、すごく大事な時間になっている」と二人の恋から受けた刺激も大きかった様子。沢尻も「あの純粋さは本物。純粋な気持ちって、すごく強いんだと感じました」と明かす。

綾野は「ヘルスやそういう場面では、薄ピンクや薄紫という光の情報が多いじゃないですか。でも龍彦とアゲハのシーンでは、それが本物のピンクになった気がしたんです。そういった引力みたいなものを作り上げた彼女を、僕は本当に信頼している。また共演できる機会があった時に、その信頼をもとにまた違う可能性に向かっていけると思っています」と、沢尻との道が交差することを待望。

沢尻も「綾野くんは、本当に龍彦のようだった。安心して向かっていこうと思った」とどこまでも真っ直ぐな龍彦と綾野を重ねるなど、確かな絆を育んだことが伺える。役者として高みを目指す二人の化学反応が、かわいらしく、純粋な恋として結実した。是非、スクリーンで堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

▪︎綾野剛
スタイリスト : 長瀬哲朗
ヘアメイク  : 石邑麻由

▪︎沢尻エリカ
スタイリスト : 関志保美
ヘアメイク  : 山田典良
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