綾野剛、沢尻エリカは「人見知り」と分析
和久井健の人気コミックを映画した『新宿スワン』(5月30日公開)では、鬼才・園子温監督のもとに、綾野剛、沢尻エリカをはじめとする今最も勢いのある俳優陣が集結。それぞれのエネルギーが爆発する、パワフルな快作となった。綾野と沢尻を直撃し、園監督の印象を明かしてもらった。
のし上がるために新宿にやってきた白鳥龍彦(綾野)が、スカウト稼業に足を踏み入れ、正義感と優しさを武器に闇の勢力に立ち向かう姿を描く本作。龍彦と恋に落ちる風俗嬢のアゲハを演じているのが沢尻だが、「原作ではもう少し若い設定なので、ナチュラルメイクにして、童顔に見えるように意識していました」と役作りでは、“若さ”を意識したと語る。
綾野が演じる龍彦も、原作冒頭では19歳という設定。綾野は「僕も意識せざるを得なかった。32歳の男が19歳の役をやることって、壮大なファンタジーなので」と苦笑いを見せ、「沢尻は意外と童顔だと思う。優しい顔をしているから。子どもみたいって言ったら怒られるかもしれないけれど、そういった顔もできるから」と沢尻のアゲハ役へのハマりぶりを絶賛。一方、龍彦役においては「顔をちょっと太らせて、若さ特有のモチモチしている印象を与えられたらいいなと思っていました」と、体重を増やすというアプローチも試みたそう。
「漫画原作は、見た目から入ってもいいと思う」と持論を明かす綾野だが、「心も若くなったことは事実」と、龍彦として生きている間は精神的にも若々しくなったという。続けて「一緒に、UFOキャッチャーでぬいぐるみをとっているだけですごい楽しかった。やっぱり、若いということは驚異です。何もかも凌駕する」とアゲハとのゲームセンターでのシーンを回想すると、沢尻も「そうそう!プリクラを撮ったり、ゲーセンに行くなど単純に遊ぶということがこんなに楽しいのかと。今はなかなか行くことすらないし。本当に若さって素晴らしい!」と笑う。
園監督からは「特別に何か言われることはなかった」と声をそろえる。「信頼してもらっているというのが伝わってきて、すごく自由にやらせてくれた」と沢尻。「以前からいろいろとお話は聞いていたので、園さんとお会いするまで、どういう方なんだろうとすごく楽しみにしていて。現場では、特に細かい指導はなく、信頼関係の中でできている感じがしました」
綾野は「だいたい俺たち男は、ワンテイクかツーテイクでOK。もちろん一発でOKをもらうつもりでやっていましたが、沢尻に関してはすごく粘っていた。あれ、園さんがただ沢尻を見ていたいだけなんです。いろんな顔を見たいからって。園さんに聞いたら、『当たり前じゃん、だってかわいいもん!』と言ってました」とニヤリ。「でもそれこそが、園さんの作品で女性が豊かに見える原動力になっていると思う。女性は、叩けば響くものだと思っていらっしゃるんですよね」
そんな中、座長として現場を盛り上げたのが綾野だ。この日も自ら「白鳥龍彦名刺」をインタビュー会場の一人一人に配るなど、誰もがそのサービス精神にノックアウトされていたが、「主役の特権って、みんなとコミュニケーションを取りやすいことくらいなんです」と綾野。
現場でも、龍彦そのもののように沢尻に接していたそう。「沢尻は人見知りなんですよ。現場の端っこの方でヘッドホンで音楽を聞いていたりすると、一人になりたいのかなとか思われがち。それは演じてきた役柄であって、彼女本人ではないから。ちょっかい出すとちゃんと対応してくれるし、コミュニケーションがきちんと取れる方。僕は一緒にいて楽でした」
沢尻は「今回の現場は、常に楽しかった。綾野くんはもう、本当に龍彦という感じで、完全にその世界に入っていた。安心して向かっていこうと思いました」と目を輝かす。また演じたアゲハ役にも「これだけピュアな気持ちを持ち続けられることって、すごいこと。私もそういう部分がほしいなと思いました。でも、アゲハが裸足になるところなんかは、私と似ているかもしれませんね。私も結構、裸足になるので」と茶目っ気たっぷりにコメント。
綾野と沢尻に加えて、山田孝之、伊勢谷友介ら錚々たるメンバーが集った本作。認め合う者たちが、綾野を中心に素晴らしいチームワークを築いた。そのパワーが確かに映画にも刻まれている。【取材・文/成田おり枝】
スタイリスト : 長瀬哲朗
ヘアメイク : 石邑麻由
▪︎沢尻エリカ
スタイリスト : 関志保美
ヘアメイク : 山田典良