インディより都会的なヒーローが大活躍『天使と悪魔』―No.11 大人の上質シネマ

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インディより都会的なヒーローが大活躍『天使と悪魔』―No.11 大人の上質シネマ

「秘密結社によるヴァチカンの爆破を阻止せよ!」――この恐ろしい任務を受けてたつのは、探偵でも刑事でも、CIAでもない。ハーバード大学に務める宗教象徴学者、ロバート・ラングドンだ。前作『ダ・ヴィンチ・コード』(06)では聖書の“真実”を暴いた彼が、今回は宗教と科学の対立という壮大なテーマに向き合いながら、奇怪な事件の謎に挑むことになる。

学者ラングドンの武器となるのは、もちろん“頭脳”。…であることには違いないのだが、今回はかなり肉体を駆使しているのに驚かされる。なにしろプールでさっそうと泳ぐシーンから登場するのだから、冒頭から意気込みが伝わってくるというもの(このシーンは後半へとつながる伏線にもなる)。実際、今回はアクション映画といっても過言ではないほどのダイナミックなシーンが満載。ラングドン持ち前の膨大な知識とあいまって、かなり“最強”化しているのだ。

ベストセラーを原作とした内容は、かなりシェイプされてはいるものの、複雑かつ緻密な設定を見事に映像化している。核爆弾をはるかに凌ぐエネルギーを有する“反物質”が世界最大の科学研究所セルンから盗まれ、かの天才科学者ガリレオ・ガリレイも属したという秘密結社イルミナティによってヴァチカンに仕掛けられたことから物語は始まる。

折りしもヴァチカンはローマ教皇選挙の真っ最中であり、イルミナティは教皇候補の枢機卿4人を、科学の4大元素“土・空気・火・水”になぞらえた彫刻のもとで処刑すると宣言。ヴァチカンに呼ばれたラングドンは、処刑場所と、反物質が仕掛けられた場所を探るため、システィナ礼拝堂やサン・ピエトロ広場など、名だたる教会や広場を、文字通り奔走する。

そう、ラングドンは謎解きに冴えた頭脳を見せる一方で、炎に包まれた枢機卿を助けようと火の粉を浴び、暗殺者の銃弾をよけ、噴水に投げ込まれた枢機卿を助けるため水中に飛び込むなど、アクション・ヒーローばりに大活躍を見せる。だが、彼を演じるのが、親しみやすい魅力をもつトム・ハンクスということもあって“かっこよすぎない”のがいい。どこか温かみのあるその存在感は、後味のいいクライマックスにも活かされている。

いわばこれは、教授にして肉体派でもあったインディ・ジョーンズ風にいうと、『ロバート・ラングドン/宗教と科学の聖戦』。舞台は密林ではなくヴァチカンというのがキモで、ラングドンはインディよりも都会的で、ぐっと身近に感じられるヒーローだろう。

この教授と、頭脳明晰かつ美しい科学者ヴィットリア(アイェレット・ゾラー)とともに、ちょっとスリリングなヴァチカン案内をしてもらうつもりで観れば、目にも頭にも十分な刺激が待ち受けることは必至。ただのミステリーじゃ物足りないという、欲張りな大人にオススメしたい。【ワークス・エム・ブロス】

■『天使と悪魔』は5月15日(金)全世界同時公開

【大人の上質シネマ】大人な2人が一緒に映画を観に行くことを前提に、見ごたえのある作品を厳選して紹介します。若い子がワーキャー観る映画はちょっと置いておいて、分別のある大人ならではの映画的愉しみを追求。メジャー系話題作のみならず、埋もれがちな傑作・秀作を取り上げますのでお楽しみに。
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