吉高由里子語る「『重力ピエロ』は水面みたい」

インタビュー

吉高由里子語る「『重力ピエロ』は水面みたい」

「完成した映画は“水面”のようでした」 これは、吉高由里子が映画『重力ピエロ』を見た後の感想である。ありがちな形容詞ではなく、さらっと口に出したこの表現が印象的だった。

『重力ピエロ』のメインの登場人物は、加瀬亮扮する泉と、岡田将生扮する弟・春。ふたりが住む街で連続放火事件が起こり、やがて意外な事実が彼らを待ち受ける。吉高が演じるのは、春を追いかける謎の美女役だ。それにしても、本作のどこが“水面のよう”なのだろう。

「透き通った作品ではないと思ったんです。水面みたいに、なんか揺れてる感じ。底は見えないのに、自分の姿だけは(水面に)映ってるというか」

本作は、脚本の段階からすごく気に入ったという。「読んでて面白い言葉がいっぱい出てきて、いちいち言葉で頭のなかに映像を作っちゃうから台本がなかなか進まなかったです。でも、ひとつの言葉でこんなに画(え)が広がるんだなって、そう思ったのは初めてでした」

劇中で描かれる家族の絆。吉高の家族に関しての解釈も興味深い。「家族っていうくくりはどこからなんだろう?と考える前に自分たちがくくりをつけてるんですよね。すごく心地よい微妙な距離感があったほうが、家族という結び目はほどけもしないし、絡まりもしないのかなって」

泉たちの父親に扮する小日向文世が「俺たちは最強の家族だ」と断言するシーンは、その家族の絆を象徴する言葉だ。吉高は小日向について「なんか、顔を見ただけで切なくなって泣けそうになっちゃう。でもお父さんの一生懸命で不器用なところは泉に似てるし、お母さんはわりと器用そうでハルに似てるなって思う。やっぱり家族って似ていくんだって思いました」

さて、お決まりだが、今後やってみたい役柄は? 「自分でやってみたいものというよりも、『私にやらせたい』と思ってくれたものをやっていきたいです。画を浮かべてくださったのならそれに近づいていきたい。『もうやだ』って思うときもあるけど、そう思ったら今度は寂しくなるんだって最近気づいて。だから、どん欲にやったらもっと楽しめるかなって思い始めたんです」

と、そう言ってる途中で、「あ、私“雨降らし”がやってみたい」と無邪気な表情でひと言。“雨降らし”とは、実際に雨のなかで撮影するのではなく、シャワーで雨を作ったなかで撮影するシーンのことだ。「びっしょびしょになって、見るからにかわいそうで、同情を欲してる感じの役がいい。雨のなかで『なんでだよ〜』みたいな感じで嘆きたいです」  なるほど、そんな悲劇のヒロインを演じる吉高も見てみたい。

最後に改めて『重力ピエロ』をこうアピール。「時間を贅沢に使って、1カットにたっぷりと時間をかけて撮ったので画もきれい。また、言葉ってこんなにいろんな方向へ転がせるんだと、気づかされた作品です!」

吉高の言うとおり、原作者・伊坂幸太郎ならではの言葉遊びや独特のニュアンスが、映画でも活かされている。そして、最後に観客を待ち受けるのは、実に深みのあるメッセージだ。原作ファンもそうでない方も、じっくりと味わってほしい作品だ。【MovieWalker/山崎伸子】

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