カンヌ総括(2) 今年のカンヌ、パルム・ドール受賞にまつわるウワサ
カンヌ総括(1)より続く――
さて、パルム・ドールはと言うと、記者たちの評価は、ジャック・オディアール監督の『プロフェット』に傾いていた。が、結果は『ホワイト・リボン』のミヒャエル・ハネケ監督がパルム・ドールを受賞。
確かに例年記者の評価が高いものはパルム・ドールを外されることも少なくないのだが、今年はイザベル・ユペール審査員長の強力な後押しがあったのではないかとの噂も飛んでいるのだ。
もちろんカンヌの賞は審査員団の独断で決めるものなので審査員たちが納得すればそれでいいのではあるが。ユペール審査員長自らがプレゼンターをつとめるあたりは、どうもハネケ監督の『ピアニスト』(01)で女優賞をとったことへの恩返しとも見えてしまったのは致し方ない。
受賞作品の中で日本公開が決まっているものが、俳優賞を受賞した『イングロリアス・バスターズ』(10月公開予定)だけというのも寂しい。昨年秋以来の世界的な不況は日本だけではなくカンヌ国際映画祭にも影響を与え、セラー、バイヤー、記者ともに参加者が減っている。“なんとなく、空いているよね”というのが開幕して最初の頃の記者たちの挨拶だったほどだ。
しかし、Show must go on..それでもカメラはまわっている。映画業界が発展途上で製作が困難な国や、社会的に製作の自由が規制されているような国の映画作家たちを応援しようというカンヌ、個性的なスタイルを持ちながら挑戦を続ける作家を応援しようというカンヌ。そんな“作家中心主義”を改めて確認した結果になったのが、今年のカンヌ国際映画祭だったのではないか。日本でも受賞作が見られることを期待したい。【シネマアナリスト/まつかわゆま】
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