倍賞千恵子が語る、高倉健の死「二度と出てこないタイプの俳優」

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倍賞千恵子が語る、高倉健の死「二度と出てこないタイプの俳優」

来月で一周忌を迎える俳優・高倉健の追悼特集「高倉健と生きた時代」が第28回東京国際映画祭にて開催中だ。10月25日にはTOHOシネマズ新宿で行われた舞台挨拶に倍賞千恵子が登壇。高倉健、渥美清、川島なお美といった親しくしていた人の死について、しみじみと語った。

公けの場で、倍賞が高倉について語るのは今回が初めてのこと。倍賞は「突然にいらっしゃらなくなっちゃって。本当にショックでした」と高倉の死を振り返り、「先日、友人の川島なお美さんが亡くなったときもそうだったけれど、渥美(清)さんもそうでした。親しい人が突然にいなくなるというときの衝撃は、自分の前に分厚いカーテンをバサッと落とされて、そのままその人がいなくなったよう」と胸中を明かした。

また、高倉について「渥美さんとか笠智衆さんとかみたいに、俳優さんとして二度と出ていらっしゃらないタイプの俳優さん」と唯一無二の存在だと話し、「山田(洋次)さんは『素晴らしい俳優さんほど、贅肉が少ない』というんです。それは、自信がない人ほど小細工のある芝居をするということ。それが本当にない人が、渥美さん、笠智衆さん、高倉健さんかなと思う」とコメント。「私もそんな俳優、人間でありたいと思う」とじっくりと語っていた。

倍賞は、今回の追悼特集にて上映される『幸福の黄色いハンカチ』(77)、『遙かなる山の呼び声』(80)、『駅 STATION』(81)にて高倉と共演。『幸福の黄色いハンカチ』のときが初対面だったというが、「かっこいいなと思った。眼力のある方だなという気がして緊張しました」と第一印象を思い出して、にっこり。

「お茶目なところもあって」と切り出し、「打ち合わせでみんなでお茶をしているときに、コーヒーとお水が置いてあったんです。すると突然、健さんが腕時計を外してお水の中にパシャんと入れて。私が『何をするんですか!』とびっくりしていったら、『大丈夫です、これは防水です』って。そういう驚かすみたいな、お茶目をなさる方」と告白。数々の名作の裏話とともに、最後には歌声まで披露してくれた倍賞。貴重な思い出話、温かな歌声に会場からも大きな拍手が送られていた。

追悼特集「高倉健と生きた時代」では、昨年11月10日に逝去した名優・高倉健の没後1年を前に、初期の任侠ものから円熟期の文芸作まで厳選された10作品を世界初すべて英語字幕付きで上映している。【取材・文/成田おり枝】