ジョシュが自分とキムタクとビョンホンの役を分析

インタビュー

ジョシュが自分とキムタクとビョンホンの役を分析

スラリ189cmの長身に優しげな笑顔。『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』(6月6日公開)で来日した爽やかジョシュ・ハートネットを直撃した。ぜひ聞いてみたいのが、木村拓哉、イ・ビョンホンらとの共演話やトラン・アン・ユン監督との撮影秘話だ。

本作は、マフィアと警察の激しい抗争を背景に、それぞれに痛みを抱えた男たちの人生が交錯していくサスペンス。メガホンをとったのは『シクロ』(95)、『夏至』(00)が高く評価され、『ノルウェーの森』(2010年秋公開)が待機中のベトナム人監督・トラン・アン・ユンだ。ジョシュは殺人を犯した元刑事クライン役を熱演している。

トラン・アン・ユン監督の現場は、ジョシュが経験してきたこれまでのやり方とまったく違い、刺激的だったようだ。「ユン監督は、とにかく現場でどんどん変えていくタイプだった。彼はすごくやさしいし、非常に知的でいろんなことを考えている。ひとつのシーンが終わると『もう少し違うことをやってみようか』とか、『もうちょっとおもしろくしない?』とソフトに聞いてくる。でもその意思は固く、アーティストとしての自信をすごくもってる感じだった。毎回監督といっしょに現場で作り上げていったから、本当に想像力を使ったよ」

そんな現場で得たものは大きかったと語るジョシュ。「自分ではコントロールできない状況にいても、うまくやっていくことを覚えたよ。本来僕はそうじゃない現場が好きなんだけど、今回その考えは捨てるしかなかった。毎日変わる、非常に混沌とした現場だったからね」

人の傷を癒せる謎の少年シタオ役にキムタク、冷徹なマフィアの重鎮ス・ドンポ役にイ・ビョンホン。それぞれのキャラクターをジョシュはこう捉えた。「クラインは、ある意味、堕天使。本当は人を助けようとするのに自分自身が迷っている。ス・ドンポはまさに悪。冷血に人を殺すけど、彼にも弱みがある。それはひとりの女性に対する執着心で、人間のもつ“欲”を象徴しているのかなと。シタオはキリスト、救世主だ。でも、ある意味、これらのキャラクターをカテゴリーに分けるのは難しいね。それらは観客の解釈にゆだねられていると思うから」

ふたりと共演し、友情も芽生えたという。「一生懸命やれば母国語以外の言語でも十分演技ができるってことがわかった。ふたりともすごく一生懸命やってたし、とてもやさしい人たちだった。木村さんは東京での仕事が忙しくてあまりいっしょに過ごせなかったけど、イ・ビョンホンさんとは、しょっちゅう出かけたりしてたよ」

また、インターナショナルな現場で、映画作りへの価値観も変わった。「映画っていろんなバックグラウンドの人々を結びつけてくれるんだなと感じた。今回は実験的で、今まで僕が慣れ親しんでいた映画の撮り方とはぜんぜん違ったけど、現場でやることは同じだったし、映画の文化って普遍的だなと思ったよ」

“美しい男たちの競艶”というコピーの『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』。キャストも監督も国籍はバラバラだが、その分、非常に面白いコラボレーションができたようだ。各自の情熱の温度がそのままスクリーンに映されているので、じっくりと堪能して。【MovieWalker/山崎伸子】

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