小林聡美×市川実日子、息ピッタリの和やか対談(前編)
都会を離れ田舎で暮らす人々と、そこに共生する動物たちとの姿を描いたWOWOW発のドラマ「山のトムさん」(12月26日放送)。田舎暮らしを始めるハナを演じた小林聡美と、その友人・トキを演じた市川実日子は、共演回数が多いだけあって対談中も息がぴったり!終始、和やかな雰囲気で行われた、茶目っ気たっぷりな大人のガールズトークをお届けしたい。
――石井桃子さんの原作の舞台は戦後ですが、ドラマでは現代になっています。まず台本を呼んだ感想はいかがでしたか?
小林「石井さんの原作がとても好きで、正直、現代の物語としてどんな風に描かれるのか不安だったんです。でも、人の温かさやのんびりした雰囲気が、無理なく自然に共感してもらえるような台本になっていて…」
市川「私も小林さんと一緒で原作が大好きで。まったく別物になるのかな…と思っていましたが、でき上がったのを見たら“核”が一緒だった。人が人を思う気持ちや、些細な暮らしのなかで感じる小さな幸せが描かれていて、ホッとしました」
小林「そうそう。とても風通しの良い作品に仕上がっていて。畑とか庭とか、私たちが撮影していた、あの家から見える景色だけでも素晴らしいよね」
――そんな自然あふれる環境で、撮影するにあたってなにか意識したことはありましたか?
小林「そうですね…。撮影のとき髪の毛が短くて、それだと幼く見えてしまうと思ったのでパーマをかけました。昭和っぽく、自然が似合うようなおばさんパーマ(笑)」
市川「じつは私もパーマをかけようかなと思っていたんです。でも2人ともパーマかけているのは、違うかもしれないなと思ってやめました」
小林「でも、市川さんの農作業姿にはホレボレしましたよ」
市川「えっ、ありがとうございます…(照)」
小林「そういえば、地元の人から農作業の姿の市川さんを見て『アンタ、男?女?』って真剣に聞かれてたよね?あれは、ホント、ウケた(笑)」
市川「そうなんです!普通に聞かれてびっくりしました。それで『男です!』って答えたんですけど、全然疑われなくて(苦笑)」
――ハナとトキのセリフ回しが、友人同士なのにとても丁寧なのが新鮮でした。普通の現代ドラマでは、なかなか出てこないセリフだなと。群ようこさんの脚本について、それぞれ感じたことはありますか?
市川「言葉が小説に出てくるセリフみたいなんですよね。普段だったら言いやすいように語尾を変える相談をすることもありますが、この作品はこのままの方が良いなと。難しかったけど」
小林「群さんも初の試みで、ある意味、自由に書いて下さったんだと思います。市川さんの言う通り、普段使わない口調だけど、それも『山のトムさん』の世界観に合っていて。例えば、『あら、ネズミだわ』とか」
市川「『大胆になってきたわね』とかね(笑)」
小林「でも、ひとつ屋根の下で他人同士が暮らすには、それくらいの距離感があった方が良いんですよ。だからこそ、うまくいくこともあると思うし」
市川「そうですよね。馴れ馴れしい関係になると、話が成立しなくなっちゃう。ある程度の緊張感があるから、こういう開放的な空間に一緒にいられるのかなと」
(【対談・後編】へ続く)
【取材・文/トライワークス】