小林聡美×市川実日子、息ピッタリの和やか対談(後編)
(【前編】からの続き)
――家にネズミが現れたことで飼い始めるのが、ネコのトムさん。あまりの可愛さにとても癒されましたが、動きが予測不可能なネコとの撮影は大変だったのでは…?
市川「ネコとの撮影は多かったんですが、出演者みんな接し方がわからなくて、ネコが固まってしまう時もありました。でも、そんな時は小林さんが『怖かったねー』と言って、ネコをあやしてくれて。もう、さすがでした」
小林「ネコを飼い始めて25年なので…(笑)。トムはまだ若くて、このドラマがデビュー作なんですよ。何もかもが初めてで、ずっとキョトンとしていて」
市川「すごい印象に残ってるのは、トムの体調が悪くなるシーン。撮影当日、トムがいつにも増して元気で、全然、病気しているようには見えなくって」
小林「そうそう。ぐったりしなくちゃいけないのにね」
市川「どうしたら具合悪く見えるだろうと、みんなで考えました(笑)」
――そんなトムさんをはじめとするネコやヤギ、動物たちとの暮らしは、なんだかとても豊かに見えました。テレビや携帯もなく、世間から離れた生活をしているからこそ、普段見えない大事なものに気づけたりするんでしょうか?
市川「それはあるかも。今の時代はパソコンや携帯、隙間を埋めようと思えば埋められるものが沢山ある。でも、それって自分がなにを感じているのかさえ麻痺してしまう気がする」
小林「うん。そういうものがあるせいなのか、人との付き合いに想像力が無くなってきたりして。昔の映画やドラマで電話もない時代だと、友達や恋人と手紙でやり取りしますよね。それで3か月後くらいに返事が来ると、すごく喜んで。待っている間はいろいろ考えて、返事が来たら感動して…。そう考えると、物がない生活って今より豊かですよね」
市川「だから、『山のトムさん』や石井(桃子)さんの作品を読んでいると、惹かれるのかな」
小林「すごくシンプルだよね」
市川「出てくるのが、お天気、お花、食べ物。それで十分なんですよね」
――このような暮らしには憧れますか?
市川「そうですね、いつかできたらいいな(笑)」
小林「私も。一緒に暮らす仲間を探さなきゃ(笑)」
――ハナやトキたちが、縁側で夜空を見つめて思いをめぐらせるシーンは、ジーンときました。詩人オスカー・ワイルドの、「自由と書物と花と月がある。これで幸せでない人間などいるものだろうか?」という言葉が流れますが、その言葉をどう思いましたか?
小林「そんなふうに言い切れて、そして思うことができて幸せだな、と」
市川「確か撮影は、最後の日でしたよね?1か月間、緑の中で暮らした後だったせいか、あの空気の中で聞くことができて、とても気持ち良かった」
――ちなみに「自由と書物と花と月」に、もうひとつ加えるとしたら?
小林「迷わず、ネコですね!」
市川「私はお茶かな (笑)」
【取材・文/トライワークス】