竹野内豊と江口洋介がうなる『人生の約束』石橋冠監督の熱意

インタビュー

竹野内豊と江口洋介がうなる『人生の約束』石橋冠監督の熱意

共にスター街道を闊歩してきたイケメンスター、竹野内豊と江口洋介。40代に入ってからの彼らは、積み上げてきた人間力が表裏一体として加わり、ある種の円熟味を帯びてきた。そんな2人が、初共演を果たした『人生の約束』(2016年1月9日公開)について、2ショットでのインタビューに答えてくれた。

本作の舞台は、富山県射水市の新湊地区で、毎年行われる「曳山まつり」をモチーフに、人と人との絆を描く。竹野内は、友の死をきっかけに新湊を訪れる、IT企業のCEO中原祐馬役、江口は、彼の親友の義兄で漁師の渡辺鉄也役を演じた。

曳山をみんなでひくことを「つながる」と表現する。竹野内は、この言葉について「わからないんです」と石橋監督に相談したそうだ。「そしたら、冠さんも『俺もわからない。ただ、わからないからこそ、言葉にできないものを、映像で見せたい。こんなことを言うのは恥ずかしいけど、俺はパッションがすごく大事だと思っている』とおっしゃられて。現地に行って、江口さんやスタッフの方々にお会いしたら、一目瞭然でした。冠さんがやりたいことはこういうことなのかなとだんだんわかっていった感じです」。

江口は、本作を「地方都市のどこにでも当てはまる普遍的なドラマ」だととらえた。「半径何百メートルのなかでの人とのつきあいを描いていく。それはものすごく強いもので、それがあれば、人生が豊かになっていくのではないかとも思える。今の年齢で演じるからこそ、考えるものがありました」。

本作を手掛けたのは、西田敏行主演ドラマ「池中玄太80キロ」シリーズなど、数々のテレビドラマを手掛けてきた石橋冠監督で、満を持しての初監督作となった。竹野内は、石橋監督について「絶対なる安心感がありました」とうなる。

「技術スタッフも、音声さんも、カメラマンさんもみんな熟練の方ばかりで、彼らを冠さんが引っ張っていく。みんなが『冠さんのためなら』と動くんです。僕は今回初めてご一緒させていただきましたが、入りづらいんじゃなくて、かえって居心地が良かったです。また、冠さんは、エキストラや新米の助監督まで、ちゃんと名前で呼ぶ。やっぱりすごいなと思いました」。

江口も「見習いたいね」と感心する。「俺なんて覚えられないよ。それに、それぞれのセリフが全部入っているんです。そんな監督に、俺はいままで会ったことがないです。質問すると、よどみなくヒントになることを言ってくれるんです。その安心感が素晴らしかった」。

現場で、石橋監督はほとんど1テイクしか撮らなかったという。竹野内も「もっとやりたいなと思ってしまうんですけどね」と苦笑い。江口も「たぶん初対面の肌合いみたいなもの、良いところをスパッと取っていくのが上手いんでしょうね。スタッフもそれを逃さないという空気を作るし。常に真剣勝負です。」と絶賛する。

竹野内も「モニターを突き刺すように見ているんです。それで、役者が心理的に気持ち悪いと思ったら、それも瞬時に察してくれる。本当に素晴らしい現場でした」と言葉をかみしめた。

2人の充実感あふれる表情を見て、いかに本作の現場が実りあるものであったかが伺えた。そして、その思いは、スクリーンに焼きついている。是非、豊かに熟成した温かい人間ドラマを堪能していただきたい。【取材・文/山崎伸子】

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