キアヌ・リーヴス「人生ってタフだよね」人生と映画への情熱を語る

インタビュー

キアヌ・リーヴス「人生ってタフだよね」人生と映画への情熱を語る

51歳となったハリウッド俳優キアヌ・リーヴス。今なお、アクションから人間ドラマまで幅広い役どころにチャレンジし、観客を喜ばせている。彼が私たちを魅了するのは、いつでも誠実な仕事への姿勢だ。キアヌにインタビューを試みると、「ボルドーワインのようなんだ」と年齢を重ねてより深みを増した、映画づくりへの情熱を明かしてくれた。

『ビルとテッドの大冒険』や『マイ・プライベート・アイダホ』で若者の胸打つ青春を体現した20代、『マトリックス』など大ヒットシリーズでハリウッド俳優の代表格となった30代。前作『ジョン・ウィック』では本格アクション映画に復帰するなど、仕事への意欲は旺盛そのもの。最新作『砂上の法廷』(3月25日より公開)でキアヌが扮するのは、真実を追求する弁護士・ラムゼイ役。熱意と正義感を持った弁護士をリアリティとともに演じ、スリリングな法廷劇へと観客を誘う。

キャリアを重ね、50代に突入したキアヌ。仕事への挑み方や楽しみ方に変化はあっただろうか?すると「映画に対する情熱というのは、まったく変わらないんだ」とじっくりと語る。「むしろ、豊かで深い味わいものになってきていると思う。まるで非常にできのいい、ボルドーワインのようにね。こういう大好きな仕事を与えられたことに本当に感謝しているし、今一番幸せなのは、自分の愛するストーリーを、愛する人々と一緒に作っていけることなんだ」

『砂上の法廷』でもその喜びを大いに味わった。驚きの結末が待ち受けるストーリーに、「誰が嘘をついていて、誰が真実を話しているのか。脚本を読んでいてグッと引き込まれたね。最後の結末は、演じているみんなも醍醐味を感じる部分だった」と惚れ込んだそう。

監督を務めたのは、『フローズン・リバー』のコートニー・ハント。弁護士資格も有する才女だ。彼女は実際に弁護士として法廷に立つ夫のサポートをすることもあり、法廷でのリアルな感情やドラマを本作で表現しようとしていたという。「コートニー監督に会ったときに、たくさんの面白いアイデアを持っていた。ワクワクしたね。彼女は『コラボレーションしたい』といってくれて。僕も色々と意見をいいながら、ラムゼイ役を一緒に作り上げていけると思ったので、とてもやりがいのある仕事だと思ったよ」

ラムゼイ役には、敏腕弁護士として、「法廷で生きてきた人」の佇まいが必要だ。「やはり、リアルな弁護士に感じてもらいたかったんだ。それには『ここが自分の仕事場なんだ』という、法廷への馴染み感が必要だと思ったよ」とキアヌ。

「監督からは、『まずトーンをつかんでほしい』といわれて。ポール・ニューマンの『評決』を参考にしたんだ。それから実際の法廷に足を運んで、弁護士の仕事ぶりを観察した。アメリカではオンラインで法廷の様子を見ることもできるので、それはかなりたくさん見たよ。特に弁護士の技術は注意深く見た。検事側の証人にどのようにアプローチしていくのかは、本当に興味深かった」と弁護士の仕事を深くリサーチした。「なんと最終弁論は、監督と話し合いながら僕が書いたものなんだよ。ラムゼイの戦略やセリフも、監督と練りながら作っていったんだ」というように、ハント監督からは厚い信頼を得た。

また、レニー・ゼルウィガーとの共演も刺激的なものとなった様子。「彼女は本当に素晴らしい女優だよ。実は僕は、彼女がスクリーン・デビューした頃からのファンなんだ。こうやって一緒に仕事ができたのは、特別な体験だった。今回も複雑で多面的な演技を見せているし、それも彼女の持つクリエイティビティから来ているものなんだ。どんなキャラクターにも信ぴょう性をもたらすことのできる、とても軽やかで、稀有な女優だと思うよ」

人間の裏側を映し出す内容に共感する点も多かったようで、「人生って、本当にタフで厳しいものだよね」と穏やかに笑う。「僕はキャラクター全員にすごく共感ができたんだ。みんな嘘をつくし、自分に都合のいい真実だけをいったりする。でもそれぞれに状況があって、それぞれが彼らなりの愛情や不安を抱えているんだ。嘘をつく人たちであっても、やっぱり共感も感じてしまうね」

多面的な人生模様を演じられたことに充実感をにじませるキアヌ。誠実に質問に答える姿からも、映画づくりが楽しくて仕方がないといった少年のような純粋な思いがひしひしと感じられた。ぜひ、キアヌ・リーヴスの今、そして予測不可能な法廷ミステリーをスクリーンで堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

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