東出昌大と窪田正孝は“何マニア”?
福満しげゆきの人気コミックを映画化した『ヒーローマニア-生活-』(5月7日公開)で初共演した、東出昌大と窪田正孝にインタビュー。東出は、冴えないフリーター中津秀利役を、窪田は身体能力が抜群だが、下着泥棒でニートという土志田誠役に扮した。そんな2人に、役どころから自分たちが“何マニア”なのかまで語ってもらった。
東出は豊島圭介監督から「履歴書の賞罰欄を、書いては修正テープで消すというのを繰り返すのが中津だ」とアドバイスを受けたのだとか。「消したい過去、やり直したい過去があるけど、そこを自分自身が認め切れていない。修正テープを使うというズボラさもあるし、人間としては未発達。だから、本当に行き詰まり、自分がどう変わっていったら良いのかわからない、鬱屈している人物だなと思って演じました」。
窪田は土志田誠役について「第一に下着ドロボウです。そこがファーストインパクトになると思い、大事にしました」と笑顔を見せる。「1人だったところから、少しずつ仲間意識を持っていく。土志田自身はすごくマニアックな部分があるし、戦いに対してもストイックです。個な部分がだんだんみんなのための力になっていく。そんなふうになったら良いなと感じながらやっていました」。
演じた役柄と自身に共通する部分はあったのだろうか?東出は「将来に対して漠然と不安を抱くことは若い時もあったし、いまでもあります」と言う。「何をして良いのかわからなくて鬱屈していて、何かにつけて人のせいにしていた。そこは誰もが経験するモラトリアムな時期だという感じで演じました」。
窪田は、土志田と同じようなストイックな印象を受けるが、本人は「どうなんだろう?」と首を傾げる。「求められる役割を果たすことができないと、役者の仕事として成立しないので、そういう部分はあるかもしれないです」。
東出は、過去を思い返し「将来への不安だけではなく、人間関係が上手くいかなかった時も、結局は自分のせいなのに、それに気づけない時期がありました。あいつのことが気に食わないというのは、結局自分と似たところがあるからなんですよね」と穏やかな表情で語る。
窪田も「僕もありました」と共感する。「自分から逃げていたんです。いまもどこかで妥協している部分はあるかもしれないというか、実際、あると思いますし。でも、結局、みんな自分自身との戦いだと思うので、頑張ったことは後になって返ってくるから、向けられた課題や役割をやっていかなければと、常日頃思っています」。
ちなみに、タイトルにかけて2人が何マニアなのか、聞いてみた。東出は“人マニア”だと言う。「僕は将棋も落語も剣道も、そこそこみんな好きなんですが、人といっしょにいることが好きなので、人間が好きなんだと思います。人マニアというか、人間関係マニアですね」。窪田は「“黒マニア”ですかね。黒いものが好きです。自然に黒くなっていっちゃう。気持ちとかも」と言って笑いをとる。
初共演した感想についても伺った。東出は、窪田について、職人のようだと思ったそうだ。「決めるところは決める。アクションもそうですし、土志田の変態性を醸し出すうえでも、オンオフの切り替えがパキっとできるんです。身体能力もすごいですし」。
窪田は、東出のコミュニケーション能力の高さに感心した。「段取りの前から、監督に『もっとこうしたら中津らしいんじゃないですか』というふうに相談をされていて。僕は言葉にするのがすごく苦手で、まずはテストでやってみて、それが監督のイメージと違ったら言ってくださいという感じなので、アプローチの仕方が違うのかなと。東出さんは、みんなで作っていく感じがみんなに伝わってくるから、すごく良いなと思いました」。
東出昌大と窪田正孝。美形でイケてる2人が演じるトホホキャラがたまらない『ヒーローマニア-生活-』。ヒーロー映画とは一線を画すオフビートでパワフルなコメディを楽しんで。【取材・文/山崎伸子】