柳楽優弥が菅田将暉らと競演「食われるくらいなら俳優やめます」
青春群像劇やバイオレンス・アクションといったシンプルな枠には収まらない、規格外の衝撃作『ディストラクション・ベイビーズ』(5月21日公開)。主演の柳楽優弥が演じた主人公・泰良(たいら)は、後半に行くにつれて、ただのケンカ野郎から、“闘神”のようなカリスマ性を帯びてくる。熱演というよりも怪演。そう、これが柳楽優弥の底力だ。そこで柳楽にインタビューし、過酷だった撮影現場を振り返ってもらった。
本作は、東京芸術大学大学院修了作品『イエローキッド』(10)や、ももいろクローバー出演の短編『NINIFUNI』(11)で頭角を現していた注目株・真利子哲也監督の商業映画デビュー作だ。愛媛県松山市を舞台に、泰良はまるで野獣のようなストリート・ファイトを繰り返していく。
「ちょっと熱くなれるというか、遊び心をもって挑める作品に、そう毎回出会えるわけじゃない。実際、こういう作品はあまり観ないから、いろんなスタッフの方と食事をするなかで、『これこれ、こういう映画を観たかった』と本当に思えるような映画にしたいと、よく話していました。内容に好き嫌いはあると思いますが、わかりやすい映画が多いなか、すごくわかりづらく、若干考えなきゃいけないような映画を、こういう豪華なキャストでやれる状況は滅多にないとも思いました」。
実際、真利子監督の下、柳楽をはじめ、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎といった、人気実力を兼ね備えた若手スターが集まった。「監督が『みんな気合バチバチで現場に挑んでくるから、食われないでくださいね』とか言うんです。僕はまんまと煽られて、『食われるくらいなら、俳優やめます』みたいにのっちゃって(苦笑)。意地でもやめたくないので、頑張らなきゃと追い込んでいきました」。
柳楽が放つガチンコのアクションや、次第にまとっていく異彩のオーラが印象的だ。「セリフがない分、ちょっと油断したら変な人になっちゃう。どこかで説得力をもたせたいと思ったので、表情などでそういうものを出せたらと思いました。監督とは信頼関係ができていたので、非常にやりがいがありました」。
柳楽は、菅田将暉ら共演者と演技をぶつけ合えたという手応えを口にする。「ニコニコし合ってやる恋愛映画とはほど遠いことをやっていました。この顔ぶれなら、そういう映画もできちゃうと思いますが、そこは真利子監督のすごいところで。これだけのキャストを集めて、思い切り振り切ったことをやっています」。
舞台挨拶では「世代交代です」と、堂々と自分を含めた若き共演者たちの台頭をアピールした柳楽。「僕、普段はうらやましいとか、いいなあとか、思わないようにはしているんですが、良い作品や面白い作品を作っている先輩たちを見ると、どうしてもそう思ってしまう。そういう意味で、世代交代したいという思いはあります」。
柳楽は、小栗旬、山田孝之、藤原達也ら30代の世代への憧れが強いと言う。「普段からお世話になっている方々ですが、格好良いんです。いまの30代をカラフルにした人たちです。僕は26歳で、菅田くんが23歳。とりあえず、20代もしっかり気合を入れていきます!という意味がすごく強かったし、それが原動力となるんです」。
元々、強い目力が一層輝いて見えた柳楽優弥。『ディストラクション・ベイビーズ』では、座長として、稀有な存在感を発揮している。彼らの挑戦を観てほしい。【取材・文/山崎伸子】