斎藤工、映画人として目指す「旧世代と新世代の架け橋」
インディペンデント作品からメジャー作品まで幅広く活躍し、監督業や自身の上映企画も並行して行うなど、映画と密接に関わってきた俳優・斎藤工。彼の最新作『高台家の人々』(6月4日公開)への取り組み方は、出演者というより、映画好きの青年が制作~公開の全過程に潜入取材した、と表現する方が近いのかもしれない。初ものづくしの現場で、斎藤が体感した事とは…?
「僕が演じる役はいつも“殺す”“殺される”“不貞に走る”の3択だったので、こういう役をいただけるのはきっと最初で最後ですね(笑)」。斎藤が冗談交じりに振り返るのは、『高台家の人々』で演じた王道の王子様的キャラクター・光正について。人気コミックを映画化した大規模な作品であること、さらにそこで王子様キャラを演じることは、現在の日本映画の“幅”を感じる絶好の機会だったと斎藤は言う。
「やっぱり『高台家の人々』のような大きな映画になると、いろいろなことが違ってきます。まず、妄想のシーンもあったので衣装が多く、衣装合わせの時間が5時間もありました。現場のケータリングも、食べ物が置いてある机すら豪華なんです。何度かご一緒した西村(喜廣)監督の現場では、無色透明の“麦茶”が出てくることもありました…(笑)。公開までのPR期間の動き方も含めて、さすがに細部まで体制が整っているなと感じました」。
体制の面だけではない。『高台家の人々』が出品された第18回ウディネ・ファーイースト映画祭で観客の反応を見た斎藤は、大作映画だからこそできる明快なエンタテインメント性について、新たな発見があったのだとか。
「日本の大作映画って、海外ではなかったことにされることもあって、評価としてはかなり厳しい現状です。でも、この作品は明らかに現地の観客に受け入れられていた。日本は漫画大国として、漫画原作の映画が持つエンタメ性を、一つの武器にしていくべきだと思い知りましたね」。
映画と真摯に向き合い、アクションを起こす斎藤工。『高台家の人々』をきっかけに、より俯瞰して現状を見つめられるようになったに違いない。「池松壮亮くんや村上虹郎くんのような若い世代の俳優は、すでに自分からアクションを起こしていて、これまでの評価軸を入れ替えようとしています。僕はそういう若い俳優たちのサポート、旧世代と新世代の架け橋になれれば…と思っています」。【取材・文/トライワークス】