「火花」の林遣都&波岡一喜が語る、チーム廣木の現場
きっと映像化を巡る熾烈な争奪戦があったであろう又吉直樹の第153回芥川賞受賞小説「火花」が、動画ストリーミングサービスNetflixにより待望のドラマ化!6月3日(金)より世界190か国で全10話一挙に同時ストリーミング配信される。そこで本作の主演を務めた林遣都と波岡一喜にインタビューし、総監督・廣木隆一が率いる刺激的な現場でのエピソードを語ってもらった。
漫才の世界で奮闘する青年たちのヒリヒリした日常を、10年というスパンで描く「火花」。主人公のお笑い芸人・徳永役を林遣都が、徳永が憧れる先輩芸人・神谷役を波岡一喜が演じた。廣木監督を筆頭に、白石和彌、沖田修一、久万真路、毛利安孝と、実力派監督がメガホンをとり、丁寧に順撮りされた人間ドラマは、フィクションでありながらも、独特のリアリティを放っている。
漫才にも初挑戦した林は「想像以上に難しくて、一筋縄ではいかないと感じました。僕は毎日朝から晩まで撮影していた4か月間だったので、ゆっくり何かを考えることはできなかったです」と撮影を振り返る。
「年末の“中打ち上げ”で、できた1話をみんなで観ることになった時もあまり気が進まなくて。でも、端っこでちらちら観ているうちに、映像が純粋にかっこいいと思えてきたんです。また、ありがたい環境で撮ってもらえていると実感し、廣木組での幸せな時間をもっと大事にしなきゃと思いました。だから、このまま徳永とだけ必死に向き合い、“フィナーレ”に進んでいこうと思ったんです」。
波岡は、それを受けて「“フィナーレ”って言った!?人が“フィナーレ”という言葉を使うのを、今年、初めて聞いたよ。なんだか恥ずかしい(笑)」と林をいじり、2人で大爆笑をする。まるで、劇中の神谷と徳永のやりとりを見ているようだ。
林は照れながら「フィナーレ感があるじゃないですか。ラストライブのシーンもそうでしたが、『火花』は全体を通して漫才みたいなもので、神谷さんの最後のくだりがオチだなと」と説明すると、波岡は「OK!あそこがフィナーレやな。それで行こ」とノリノリだ。
林は「お互いに演じた役柄に近かったです」と言うと、波岡も「今回は役作りをしたというよりは、僕ら2人の普段の関係性が、そのまま徳永と神谷の間柄になったような気持ちでやっていました」と同意しつつも「僕は神谷ほどひどくないし、あんなにおかしくはないけど」と苦笑い。
林は、『ラブファイト』(08)で波岡と共演して以来、波岡を先輩として慕ってきた。「波岡さんは、僕にとっては数少ない貴重な先輩で、何でも話せるというか、自分の超最低な部分まで言える人。いっしょにいて楽なんです」。波岡は「実際、人には言えないこともいっぱい聞いてるし」とニヤニヤ笑う。
廣木組では、カメラを気にせず、自由に動き回ったという2人だが、確かに劇中では、彼らの気のおけないやりとりが、生き生きと映し出されている。「90%、僕らに委ねられました。場所のみがざっくり決まっている感じで」と波岡が言うと、林も「何かを指定されることは少なかったです。長回しがすごく多かったし、台本にはない、現場で生まれてくるものを常に求められながらやっていました」と現場の躍動感を強調する。
波岡も「普通ならフレームがあるから、もう少し細かく動きを指示されて、位置決めなどをしますが、今回はチーム廣木だったからか、カメラマンの鍋島(淳裕)さんも、僕らがやることを捉えてくれる感じでした。僕らはただただ自由にやるだけ。本当に恵まれた環境でした」と振り返る。
林が「たまにカットを割るシーンも出てくるんです。途中から始めるので、僕らが前のお芝居とつなげるために勝手に合わせていると、『やってるやってる』という感じで、いつのまにか撮影が始まっている。カメラを確認し合うことがあまりなくて。本当に大事に撮ってくださっていると感じました」と言うと、波岡も「最高の現場でした」と清々しい表情を見せた。
まさに、映像で火花が散っているような熱さが伝わってくる本作。徳永と神谷のキャスティングがこの2人で良かったと心から思える。Netflixなので、イッキ見も推奨したい力作となった。【取材・文/山崎伸子】