三浦友和、いまの胸の内を告白「何かを残さないとまずい」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
三浦友和、いまの胸の内を告白「何かを残さないとまずい」

インタビュー

三浦友和、いまの胸の内を告白「何かを残さないとまずい」

三浦友和の俳優としての厚みと円熟味が味わえる主演映画『葛城事件』が、6月18日より公開されている。『64 -ロクヨン- 前編・後編』(公開中)では、ロクヨン捜査班の凛とした刑事役を好演している三浦だが、本作では高圧的なふるまいで、次男を狂気へと追い込む父親役に扮した。三浦にインタビューし、本作の舞台裏でのエピソードから、64歳となった三浦の、俳優としてのいまについて話を聞いた。

『葛城事件』は、映画監督デビュー作『その夜の侍』(07)が高い評価を受けた赤堀雅秋の同名舞台の映画化作品で、赤堀監督自身ががメガホンをとった。三浦演じる抑圧的に家族を支配する父親が、少しずつ家庭を崩壊させていく。中でも次男は、無差別殺人鬼と化してしまう。

三浦はまず、「脚本は、最初に読む時が観客の目だと思っています。画を浮かべながら読む習性があるのですが、とても面白かったというか、ものすごくざわつくものがありました」と、脚本自体に惚れ込んだことを明かした。

演じた葛城清についても、すごく惹かれたと言う。「清役がとにかく魅力的だったんです。滑稽で弱くて、強引で思い込みが強くて。基本は家族をすごく愛していた人が屈折していく話なので、ある程度は理解できました。赤堀監督にお会いして2時間くらい脚本への思いを聞かせていただき、やらせていただくことになりました」。

家族を大事に思っていた清については、共感できた部分もあると言う。「家庭を放棄した人の話ではないんです。清は家族に理想をもっていて、新築の家を建てた当初は幸せだった気がします。でも、その理想は清の理想であり、子どもたちや妻の理想ではなかったので、どんどん溝が大きくなり崩壊していく。実はすごく弱い人だけど、自分の弱さに気づいていない。そのあたりは理解できるし、そういうところも面白いなと思いました」。

精神を病んでいく妻・伸子役に南果歩、長男・保役に新井浩文、無差別殺人を起こして死刑囚となる次男・稔役に若葉竜也、若葉と獄中結婚を申し出る星野順子役に田中麗奈。実力派俳優陣が研ぎ澄まされた演技で火花を散らす。

「俳優とは変なもので、ちょっとオーバーにやりたくなるものです。でも、今回はそういうことを良しとしない人が集まった。みなさん、同じく空気感でいて、演技が自然というか、ガチガチに作りこまず、その場で何かをやっていくタイプでした。あまりオーバーな演技をしすぎると、それが集合体になった時『映画は面白かったけど、こういう人たちいないよね』といった架空の話になってしまう。キャスティングは大事だし、監督も同じ感性をもっている方でしたから、すごくリアリティがある作品になったと思います」。

今年で64歳となった三浦に、自身の今後についての展望を伺った。「64歳になりましたが、それまでにいろんな尊敬する先輩方が亡くなったんです。高倉健さんや菅原文太さん、僕がデビュー当時にお世話になった宇津井健さんと、みなさん80代前半でした。ほんの1、2年前の話ですが、その時に自分自身ももう10数年しかないと思ったんです。仮に80歳まで元気でいられたとしても、あと16年です。自分に一体何ができるんだろうと、ものすごく真剣に考えるようになりました」。

三浦は、そこで映画への熱い思いを吐露する。「僕はやっぱり映画が好きで、だからこの仕事を続けてきました。決してテレビドラマをバカにしているわけじゃないんですが、どっちが好きかと言われると、やっぱり映画が好きなんです。せっかく自分はこの世界に長く生きさせてもらえているので、オファーをいただいてただ出演しているだけじゃなくて、何かをきちんと残さないとまずいとも思っています。客が“入る”“入らない”ではなく、質の問題です。そういうことに一石を投じたいというか、何かをしたい。そういう年齢になったことをすごく感じています」。

俳優として確固たるキャリアを積み上げてきた三浦友和。その礎の確かさは、『葛城事件』での圧倒的な存在感が物語っている。本作は、三浦友和のキャリアにおいても特別な一本となるに違いない。【取材・文/山崎伸子】

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