「とと姉」鞠子役・相楽樹、「私みたいな人はあまりいない」
最近では若手女優の登竜門として、ブレイクのきっかけとなっている連続テレビ小説。強烈なキャストが揃う現在放送中の「とと姉ちゃん」で、ネクストブレイクを期待されているのが、鞠子役の相楽樹だ。
この“朝ドラ”大抜擢にも、本人は「気持ちもスタンスもこれまでと変わらない」といたって冷静だ。ジワジワと知名度を上げている相楽にインタビューすると、彼女が役者としてぶれないワケが見えてきた。
「若いうちに大きな作品に出演してみたかったんです。でも、あまりに急だったので準備ができていなかったというか。当初は『私はなんでここにいるんだろう』『誰だコイツって思われてないかな』と不安でしたね(笑)」。「とと姉ちゃん」出演について、相楽は戸惑いが大きかったと明かす。
「やっぱり、朝ドラってすごい」。いざ放送が始まると、やはり反響が大きかった。「今まで経験してきた作品とは確実に違ったんです。これまで応援してくださるのは男性の方が多かったんですけど、若い女性の方とか、主婦の方からブログでコメントいただけるようになった。本当に老若男女みんな見ているんだなって」。
「とと姉ちゃん」に至るまでには、思うようにいかないことも多かったという。相楽は15歳の時にスカウトされて芸能界入り。当時はモデル志望だった。「その頃は雑誌『nicola』に憧れがあったんです。芸能事務所に入ればモデルになれるかも…と、そんな考えで(笑)。初めて受けたオーディションがドラマ『熱海の捜査官』なんですけど、この作品が決まってからずっとお芝居をやり続けてる。結局モデルはやったことがないんです(笑)」。
「いつのまにか演じることが楽しくなった」という相楽は、舞台で地道に演技を磨いてきた。最初はキャパ30人ほどの舞台に立つこともあったとか。「小劇場って演出家さんしだいで稽古が完全にストップするんです(苦笑)。ヒマすぎて、やることがないから、役者みんなでエチュード(即興劇)をやって、演劇論を交わしたり…。“小劇場あるある”ですね(笑)」。「とと姉ちゃん」で相楽の演技力を褒める声は多いが、10代で経験した活動がその基礎を作ったのかもしれない。
「舞台だけじゃなくて、グラビアの仕事もしていたし、映像作品も少しずつやらせてもらっていた。若い女優さんたちと話しても、私みたいな人はあんまりいないですね。いろんなことを経験してきたからこそ、今回の『とと姉ちゃん』があると思うので、積み重ねてきたものは間違っていなかったんだなって、すごく報われた気分です」。
そんな相楽の最新作が、オムニバス映画『スリリングな日常』(6月25日公開)の一編「不審者」だ。「とと姉ちゃん」とは打って変わって現代劇。都会の日常に潜む“スリリング”なできごとを綴るミステリー短編で、相楽は大学生・奈々美を演じている。シャツの襟もとからはタトゥーがのぞいていて、口数も少な目、どことなく陰のあるキャラクターだ。
「タイトルにも“日常”とありますが、LINEでやりとりしたり、電話をスピーカーにして作業しながら会話をしたり、本当に日常っぽい生々しさがあります。セリフは少ないですが、自分の日常に起こるかもしれない…という恐怖があって、観た人によっていろんな想像が掻き立てられると思います」。
「これからみなさんのイメージを覆していくのが楽しみ」。相楽は早くも次の展開に期待を膨らませている。「今は『とと姉ちゃん』の鞠子の印象がすごく強いと思うんですけど、その印象から想像できないような役をやりたいですね。『スリリングな日常』も『鞠子にタトゥー入ってるよ!』と驚いていただけると嬉しいです(笑)」。【取材・文/トライワークス】