『しんぼる』は松本人志の人生そのもの!?
『大日本人』(07)で、衝撃の映画監督デビューを果たした奇才・松本人志。第2回作品『しんぼる』がいよいよ9月12日に公開! 今度は、松本人志が一体何を見せてくれるのか。そんな期待を十分に抱かせてくれる監督もなかなかいない。いまだベールに包まれた本作の中身、製作秘話まで、松本監督を直撃した。
「テーマはしいて言えば『なるようになるか』という感じ。何か楽しい方向に動いていったらいいな、と始めました」と語る本作は、真っ白な部屋に閉じ込められた男が、脱出を試みて様々なことに巻き込まれていくストーリー。前作同様、松本が企画・監督・主演し、高須光聖と共同で脚本も手掛けている。
自身の脳内にあるイメージを、ほぼ自分一人きりで演じ、形にしてゆく作業に関しては、「よく“逆・劇中劇”って言っているんですけど、僕自身もこの部屋から抜け出したくて、大変でした。本当に頑張ってたんですけど、なかなか出れなくて。その意味では、僕も彼(主人公)も一緒。いくつで死ぬのか分からないけど、振り返ったときに、最初の方に浮かぶキツかった仕事のひとつでしょうね」と告白。
さらに、「監督としての自分と、演じている自分とのせめぎあいがあって、大変だった」とも。部屋からなかなか出られなかった理由は、納得するOKを出すまでのいわば過程。彼の作品、そして笑いへのプライドの高さが伺える。
タイトルの「しんぼる」。一体何の象徴を表したかったのだろう。「結局、世の中はみんな“ここ”から始まっているというスタート、象徴と感じるものを表現したかった」と言う松本。彼の思う“スタート”が何なのか。是非劇場で確認してほしい。
また、衝撃の前作同様、今回も間違いなく“誰も見たことがない作品”になったが、“唯一無二”というのは、やはりこだわるところなのだろうか。「オリジナリティというところだけは絶対に曲げずにやってきた。僕、結構人には聞くようにしているんです。『こんなのどっかで見たことある?』って。で、『ない』っていうのを、確認とってからやるようにしてるんですよね」
「なるようになるか」という思いと、現場で多くを決めていったという撮影。結果できた作品は、見事に辻褄があい、笑いの要素だけでなく、哲学的観点からも様々な見方のできる深い内容となった。自身の人生が投影されたか?という質問に対して松本は、「かぶっているというか、ほとんど一緒になってましたね」と答えてくれた。
松本人志の人生そのものとも言える『しんぼる』。これから父親となる彼の脳内、人生まで覗けてしまうような本作を、是非スクリーンで堪能しよう。【取材・文/成田おり枝】