松本人志『しんぼる』にセリフがほとんどないワケ

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松本人志『しんぼる』にセリフがほとんどないワケ

松本人志監督、第2回作品『しんぼる』がいよいよ9月12日に公開。変身ヒーローの日常や戦いを描いた初監督作『大日本人』(07)から一転。出演者は、ほぼ松本自身のみ。大部分のシーンが真っ白な“ある部屋”を舞台に繰り広げられる。なぜ『しんぼる』を撮るに至ったのか。監督に聞いた。

「“閉じ込められた一人芝居”をやりたかったからなのか、会話する相手がいなかったからなのか、どっちが先かは分からないんですけど、気づいたら、あんましゃべってなかった(笑)」と語るように、本作はほとんどセリフもないのが特徴。本人は「そんなに意識してなかった」と言うが、セリフが少なかった理由は、どうやら日本だけでなく海外の観客に楽しんでもらえる作品にしたかったからのようだ。

「どうしてもしゃべってしまうと、字幕にしたりするのに、僕の預かり知らないところで動いてしまうんですよね。自分の意図した感じに、ちゃんと伝わっているかという不安と、ジレンマみたいなものがストレスだったりもしたので。今回、しゃべらなければ、そこは一切気にしなくていいんで」

前作は、第60回カンヌ国際映画祭で上映。意図していないところで笑いが起きた。

「『大日本人』を作ったときは、それほど意識してなかったんですが、映画というのは海を渡るんやなと感じた。だから映画というのは、日本人だけを意識していたら、良くないな、と。そういう意味ではテレビと違うなと思って」

数々のコントや企画をテレビで作り上げてきた松本監督。他にもテレビと映画における違いは? 「もちろん、お金のかけ方もね。特にテレビは今、お金がないですし、規制も厳しくなっていますから。そういう意味では、こういう場所っていうのは貴重になってきてますね。もしこれをテレビでやったらやっぱりクレームがくるでしょうね(笑)」

そんなテレビの現状をどう感じているのだろう。「テレビは、今はトーク主体で笑いをとるという感じになっている。この映画は真逆ですね。ほとんどしゃべっていないですし。今、テレビでできなかったストレスをこっちで発散できているような気もします」

松本人志の“しゃべり”以外の笑いをテレビで見る機会が少なくなってしまった今、監督がやりたいことをやりまくった本作は、お笑いファンなら特に必見だ。

次回作は? また松っちゃんが主人公でお笑いファンを喜ばせてくれるのだろうか。

「メル・ギブソンが、『あの役を俺がやりたい』っていうんなら、それは考えますけどね(笑)。まあ、その前に3本目があるかもまだ分からないですしね」

おかっぱのメル・ギブソンに演出する松本人志! これは死ぬまでに絶対見たい! 海外に目を向けた松本監督から、ますます目が離せない。【取材・文/成田おり枝】

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