京アニ『聲の形』声優に松岡茉優を抜擢したワケとは?山田尚子監督が告白

インタビュー

京アニ『聲の形』声優に松岡茉優を抜擢したワケとは?山田尚子監督が告白

大今良時の大ヒット漫画を京都アニメーションが映画化する映画『聲の形』(9月17日公開)で、松岡茉優が主人公の少年時代の声優に抜擢された。『映画 けいおん!』をはじめ数々の名作を輩出している京都アニメーションが声優以外をキャスティングするのは、これが初めてのこと。山田尚子監督と松岡を直撃し、お互いに「ワクワクしっぱなしだった!」というアフレコを振り返ってもらった。

本作は、ガキ大将だった将也と、聴覚障害を持つ硝子が、ぶつかり合いながらも様々な経験を通して成長していく姿を描く青春ストーリー。山田監督は、「将也の少年時代を松岡さんに演じてほしい」と熱望したという。「私は、松岡さんの出ていらしたドラマが大好きで。松岡さんのやっていた役が、1話からすごく気になる子だったんです。それがすごく印象的で、『聲の形』をやるとなった時に、真っ先に松岡さんのことを思いました。ダメ元ではあったので、本当にやっていただけてすごくラッキーでした」。

声優以外のキャスティングをすることに、山田監督は「松岡さんは変な言い方だけど、絶対にお芝居マニアだと思っていたので、特には気にしていませんでした」とキッパリ。「松岡さんに対して、勝手に信頼感と安心感を抱いていました」と絶大な信頼を寄せていた。

松岡は「私は漫画が好きで、この原作も読んでいました。実は、今回のお話を聞いた時には『できないのでは…』と思ったんです。原作も知っているし、京都アニメーションさんだし、期待している方たちもたくさんいらっしゃると思って。しかも周りは声優さんばかり」と、当初はかなり尻込みをしたそう。「でも、監督が私のお芝居を見た上で『やってほしい』と言ってくれていると聞いて。声優さんの声をいつも聞いている方がそんなふうに言ってくださるなんて、これほど光栄なことはない。幸せな限りです」と、山田監督の熱意が背中を押してくれたという。

アフレコは「すごく楽しかった!」とふたり共が目を輝かす。松岡は「やりたいことが全然できなくて。でもそれが、初めてお芝居をした高校生の頃に感じた感覚とすごく似ていたんです。行ったことのないところに行くような、『何これ!?』というような感じで。久しぶりに、予想もできないし、『全然できない!』と思ったことが楽しかったんです」と、新たなチャレンジに興奮しきり。

山田監督は「すごく感受性の豊かな方だというのがビシビシわかるんです」と印象を語る。松岡が第一声を発した瞬間から、彼女で間違いなかったと実感したそう。「少年役というと構えてしまうのかなとか、自分の動きではないものに声をあてるのって窮屈だったりするんだろうなとも思って。どんな将也をやるのか、ドキドキしていました。でももう、一言目を話された時から、『よし!』って(笑)。ひとつのシーンでも、たくさんの将也をやってくださる。松岡さんはどうやって将也と向き合うんだろうというのを見ているのが、すごく楽しかったです」。

やんちゃでパワフルな男の子を見事に演じきったが、山田監督とはワンシーンごとに感覚を確認し合ったそう。松岡は、演じた将也を「愛しています」と真っ直ぐな瞳で語る。「乱暴で、いじめっ子だし、最初は将也が理解できなかったんです。でも監督とお話をした時に『将也はヒーローなんです』と言われて。その言葉を聞いた時、『ええ⁉︎』とパニックでしたが、原作を読み返したり、台本を読み込んだりして、そこに監督の言葉を合わせていくと、糸がほぐれたように理解できていった。今では将也を愛しています」。

高校生になった将也を演じたのは、人気声優の入野自由。松岡と入野との相性について、山田監督は「この人にお願いしたいという思いが先で、相性は特に考えていなかった」と笑うが、「憑依していくような感じがあった。すごく納得のいく、ひとりの男の子になっていた」と松岡と入野の相性の良さに驚嘆する。松岡は「一度、生で入野さんのアフレコを30分くらい見させていただきました。でも特に似せようと思ったつもりはなかったんです。似ているところといえば、髪型くらいですかね!?」とお茶目ににっこり。山田監督は爆笑しながらも「奇跡的なマッチングでした」と大満足の表情を見せていた。【取材・文/成田おり枝】

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