家族のために捨て身で闘うオヤジの“心意気”に共感!―No.25 大人の上質シネマ
凶悪な犯罪組織に娘をさらわれたオヤジの、渾身・超絶・暴走・圧巻の救出劇を描く『96時間』。娘を救うためなら手段を選ばないオヤジパワーに圧倒されながら、見終えたあとは痛快なカタルシスに浸れる作品だ。
主人公の中年男ブライアンが溺愛する娘キムは、離婚した妻に引き取られ、離れて暮らしている。狭いアパートの部屋で、ひとりキムの写真を見つめるばかりの冒頭のシーンの彼は、哀愁すらただよう、くたびれた中年のオヤジそのものだ。
だが、ブライアンはただのオヤジではなかった! 実は元CIAにして戦闘術のエキスパートで、キムが海外旅行先のパリで誘拐されたことを知り、スーパーオヤジに大変身する。まずはCIA時代の人脈を駆使し、キムをさらったのが若い女性を麻薬漬けにする凶悪な人身売買組織と突き止めると、過去の事例から救出可能な期限が“96時間”と判明。タイムリミットの緊迫感に加え、目的のためには行動するのみ、といったシンプルな筋書きにのっとったブライアンの暴走に、もう目が離せない!
工作員として数々の修羅場をくぐりぬけてきた彼だけに、敵が何人いようとも微塵もひるまずになぎたおしていくアクションシーンは迫力ものでスカッとさせてくれる。と同時に、脅迫や拷問でみせるスゴみ、手掛かりを得るためには友人の妻でさえも殺しかねない残忍さを放つシーンにはゾクリ。「娘を助けるためなら、エッフェル塔だって壊してみせる」。そんな荒唐無稽なセリフでさえ、この男ならほんとにやりかねないと思わせてしまうのだから、あっぱれだ。
けれども一転、娘から「パパ、大好き」と抱きつかれて顔をほころばせるさまは、やっぱりどこにでもいる、ただのオヤジ。たとえブライアンのように戦闘術を身につけていなくとも、家族のために捨て身で闘いぬこうとするその“心意気”に共感できる日本のオヤジも多いのではないだろうか? 加えてその権威をたたえたこの映画。家族を誘って見に行けば、愛も絆も深まることは、間違いないだろう。【トライワークス】