仏で大論争の問題作に見る、日仏“映画検閲”の違い
8月29日より公開の映画『マーターズ』は、残酷描写の凄まじさから、本国フランスでは公開時の鑑賞年齢制限について大論争が起こった超問題作。レイティング指定を取り下げるよう監督が幾度となく再審査を直訴し、ついには文化大臣まで引っ張り出されたというのだから、その検閲議論は相当、熱のこもったものであったことが伺える。そもそも日本とフランスの検閲にはどのような違いがあるのだろう?
自主規制組織である映倫 (映画倫理委員会)がレイティングを行なっている日本とは違い、フランスでは文化省管轄の国立映画センター、すなわち“国”がレイティングの指定を行っている。その権限は日本のそれよりはるかに強い。また、内容に関する規制の傾向としては、日本では性的な描写に厳しいが、フランスでは暴力的な描写に対して厳しい審査が下されるようだ。結局『マーターズ』は、フランスでR18 (18歳未満入場禁止)からR16(16歳未満入場禁止)に指定が緩和されることで決着したという。
似たような案件としては、日本でも『バトル・ロワイヤル』(00)に対して、文部大臣を巻き込んでの規制運動が勃発している。このときは中学生が互いに殺し合うという内容に対してR15の指定が付いたが、逆に報道の過熱が人々の関心を集め、映画自体は大ヒットという結果を残している。
ちなみにこの映画、日本ではレイティング指定は特にないそうなので、フランス中を震撼させたというトラウマ必至の描写の数々を、スクリーンで体感してみては。『マーターズ』は8月29日よりシアターN渋谷にてレイトショーだ。【トライワークス】
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