フランスの鬼才ジャン=ジャック・ベネックス、映画人は「自由のために戦う兵隊」
第29回東京国際映画祭のコンペティション部門審査委員記者会見が10月25日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、審査委員を務めるジャン=ジャック・ベネックス、メイベル・チャン、ヴァレリオ・マスタンドレア、ニコール・ロックリン、平山秀幸が出席した。
各国から集まった計16作品でグランプリを競うコンペティション部門。日本からは蒼井優主演の『アズミ・ハルコは行方不明』、杉野希妃主演・監督の『雪女』の2作品が出品されている。
今年の審査委員長を務めるのは、『ディーバ』や『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』で知られるフランスの鬼才ベネックス監督。ベネックス監督は「1980年に『ディーバ』とともに日本に来ています」と口火を切り、「その時、日本という国に恋をしました。日本びいきのオタクです!」と“日本オタク”を声高らかに表明し、大拍手を浴びた。
また審査に向けてベネックス監督は「一切の偏見なく、真っ白な状況で、目だけはしっかりと見つめていたい」と意気込みを明かし、「シネマこそ世界の財産」と映画の意義を語った。
会場にはトルコからの記者の姿もあったが、「勇気を持って映画を作ることが、どれだけ難しいかをわかっていると思う」と語りかけ、「自由があってこそ映画が作られる」と力を込めたベネックス監督。「自由な国にいても映画を作るのは大変。それすらない場所では、自分が語りたいことを語ったら刑務所に入れられたり、殺されたりしてしまうこともある。そういう意味では、映画人というのは自由のために戦っている兵隊」と、戦い続ける世界中の映画人に厚く敬意を評した。
ベネックス監督は、最近の映画では、審査員メンバーのロックリンがプロデューサーを担った『スポットライト 世紀のスクープ』がお気に入りと語り、「観客に質問を投げかけ、勇気を持って言うべきことを語っていた」と絶賛。ロックリンも感激の様子だ。
さらにベネックス監督が「富士山に登ったことがある」と言えば、チャン監督が「私も登ってみたい」、『エヴェレスト 神々の山嶺』の平山監督は「昨年ヒマラヤに行ったので遠慮しておきます」と笑わせるなど、ベネックス監督を中心に最高のチームワークを見せつけていた。【取材・文/成田おり枝】