中山美穂、岩井俊二監督が『Love Letter』の一人二役を振り返る

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中山美穂、岩井俊二監督が『Love Letter』の一人二役を振り返る

第29回東京国際映画祭(TIFF)のJapan Now部門出品作『Love Letter』(95)のトークショーが10月28日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催。主演の中山美穂、岩井俊二監督、プログラミングアドバイザーの安藤紘平が登壇した。本作で一人二役を演じた中山は、岩井監督と共に撮影当時を振り返った。

本作は、天国の恋人に向けて送った1通のラブレターがきっかけで、埋もれていた2つの恋の物語が展開されるラブストーリー。岩井監督の劇場用長編映画デビュー作だ。安藤は「1カット目が巨匠の入り方。初めて監督したとは思えない」と感心しきりだ。

安藤は「失われた時を取り戻す映画。自分の知らない記憶や掘り起こせなかった思い出は無数にあるという映画ですよね」と感想を述べる。岩井監督は「まさにそこを描こうとしたのは一つの挑戦でもありました。記憶をたどるミステリーが前半にあり、普通の映画なら解き明かすところでクライマックスを迎えるわけですが、蓋を開けたら次から次へと雨あられと出てきて、後半でミステリーが崩壊していくというものがやりたかったんです」と述懐。

一人二役に挑んだ中山は「不安だったので、監督に『髪型を変えた方がいいですか?』と聞いたら『そのままでいいよ』と言われ、ますます不安になってしまって」と苦笑い。「でも、現場に入ったらその辺はうまく演出してくれましたし、現場はぴりっとした感じで楽しむこともできました」。岩井監督は「内面で二役作ってほしいということで。まだ若い監督ですが、要求は厳しかったですね」と自身に対してツッコミを入れた。

また、ラストシーンについて尋ねられた岩井は「絵コンテも描き下ろしていましたが、かなりクリアでした。あのくらいのサイズで、ちょっと目が潤んでいて、いろんなことを想像させるところに着地させたいと思っていました。悲しいだけではなく、ちょっと微笑ましくもあり、冬が終わって春が来る感じに」と解説。それを聞いて安藤も中山も大きくうなずいた。

第29回東京国際映画祭は、10月25日から11月3日(木・祝)の10日間にわたり、六本木ヒルズをメイン会場に、EXシアター六本木、東京国立近代美術館フィルムセンター、歌舞伎座、東京国際フォーラムで開催中。【取材・文/山崎伸子】

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