『沈黙-サイレンス-』に出演した塚本晋也、「一言で言うと最高の映画です」
マーティン・スコセッシ監督が、遠藤周作によって描かれた、戦後日本文学の代表作を映画化する『沈黙-サイレンス-』(2017年1月21日公開)。本作に出演している塚本晋也が記者会見を行った。
塚本は自ら主演を務めた監督作『野火』(15)が、ミニシアターでの公開ながら社会現象化し大ヒット。また『シン・ゴジラ』(16)や福山雅治主演の『SCOOP!』(16)への出演など、塚本は俳優としても個性的な演技を披露している。今回、長崎の外海地区がモデルになったトモギ村の敬虔なカトリック信徒、モキチを演じた塚本は長崎にある日本二十六聖人記念館に登場。
メディアが多数集った会見場で塚本は「2009年に役が決まった時、少しでも『沈黙』の世界に近づきたい、舞台となるトモギ村を見てイメージを固めたいと思い、外海や遠藤周作文学館を周りました。今回、映画が完成間近となった2度目の長崎では、遠藤周作さんが足を運ばれた場所を訪れて、さらに見識を深める旅をしたい」とあいさつ。
質疑応答では「現在生きている監督で、最も尊敬しているスコセッシ監督が日本の原作を映画化するということは“事件”。皆さんも一緒にその”事件”を体感していただきたい」とコメント。『タクシードライバー』(76)を観て以来、スコセッシ監督のファンになった塚本は、テレビドラマで英語を話す役を演じていたことでオーディション参加を打診され、即答で「もちろん」と答えたという。
オーディションについて、塚本は「監督と台詞の掛け合いをする機会がありました。監督はもの凄く演技が上手で、自分も名優になったように感じた。それはジャズのセッションのようで、この経験があれば受かっていなくてもいいと思えたくらいだった」と振り返る。
撮影現場でのスコセッシ監督について、「あまり演技指導はしないんです。その代わり、何度も何度も撮る。5回6回なんてレベルではなく、カットによっては100回くらい。それがもうビックリでしたね」と塚本は演出面での驚きを明かしている。
「ご自身にとってこの作品は?」と問われた塚本は、「殉教シーンの撮影で、万が一、死んでしまってもまあいいか、と思えるほどの映画。それほどの想いで取り組んだ。答えるのは難しいですが、一言で言うと最高の映画です」と熱く語った。
スコセッシ監督が1988年に原作と出会ってから28年、読んだ瞬間に映画化を希望し、長年に渡り暖め続けてきたという本作は、17世紀の江戸時代初期、激しいキリシタン弾圧によって棄教したとされる師の真実を確かめるため、日本にたどり着いた宣教師の目に映った日本を舞台に、人間にとって大切なものとは何かを描いた歴史大作。
キャストにはアンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバーに加え、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシら実力派が集結した。ハリウッドと日本の融合が実現した本作は賞レースにおいても大きな注目を集めており、まさに“事件”ともいうべき作品になっているようだ。【Movie Walker】