東京国際映画祭、最優秀男優賞はトランスジェンダー役の男性!「女優賞を獲るかと思った」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
東京国際映画祭、最優秀男優賞はトランスジェンダー役の男性!「女優賞を獲るかと思った」

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東京国際映画祭、最優秀男優賞はトランスジェンダー役の男性!「女優賞を獲るかと思った」

11月3日、第29回東京国際映画祭が閉幕。EXシアター六本木でクロージングセレモニーと各賞の授賞式が行われた。コンペティション部門で東京グランプリに輝いたのは、ドイツ=オーストリア映画『ブルーム・オヴ・イエスタデイ』。最優秀男優賞は、フィリピン映画『ダイ・ビューティフル』でトランスジェンダー役を演じたパオロ・バレステロスにもたらされ、きらびやかなドレス姿で登場。大いに会場を沸かせた。

『ブルーム・オヴ・イエスタデイ』は、ホロコーストのイベントを企画する男と風変わりなフランス人アシスタント女性が辿る顛末を、ラブコメ要素を交えたタッチで描く大胆な人間ドラマ。クリス・クラウス監督は「この映画を作るのは簡単なことではありませんでした」と道のりを振り返り、「俳優たちにも感謝したい。俳優たちがいなければ、この映画はできなかった」と奮闘を称えていた。

そして、最優秀男優賞がもたらされた『ダイ・ビューティフル』は、美女コンテストで優勝するも急死してしまうトランスジェンダーのトリシャをめぐる驚愕の感動作。決め手に関して、審査員のメイベル・チャンは「自分の奥深くにある秘密をさらけ出しながらも、女性、男性という境界線がこれまで混ざり合うことができるのかを見させてもらった。最優秀女優賞を与えていいのか、最優秀男優賞を与えていいのか迷った」と告白。

受賞の報を聞いて急遽、フィリピンから駆けつけたというパオロは大歓声を浴びて登場。パオロは、フィリピンのバラエティ番組のホスト役などで活躍しており、有名人になりきるインパーソネーター、そしてメークアップ・アーティストとして知られている存在。スパンコール輝くゴージャスなドレス&メークアップした姿ステージに上がるや、涙をこらえて「サプライズです」と感動しきり。「最優秀女優賞を獲るのかと思っていました」とお茶目に語り、会場の笑いを誘った。

最後には、小池百合子東京都知事が「たくさんの新しい作品が東京から世界へと羽ばたいていくことを大変うれしく思っています」と挨拶。2020年の東京オリンピックを「日本、東京の文化を発信する最高のチャンス」とし、「ますます日本の文化が広く世界中に届くよう願っています」と未来を見つめ、セレモニーを締めくくった。【取材・文/成田おり枝】

<第29回東京国際映画祭コンペティション部門受賞結果>

■東京グランプリ:『ブルーム・オヴ・イエスタデイ』(クリス・クラウス監督)

■審査委員特別賞:『サーミ・ブラッド』(アマンダ・ケンネル監督)

■最優秀監督賞:ハナ・ユシッチ監督『私に構わないで』

■最優秀男優賞:パオロ・バレステロス『ダイ・ビューティフル』

■最優秀女優賞:レーネ=セシリア・スパルロク『サーミ・ブラッド』

■最優秀芸術貢献賞:『ミスター・ノー・プロブレム』(メイ・フォン監督)

■観客賞:『ダイ・ビューティフル』(ジュン・ロブレス・ラナ監督)

<アジアの未来部門>

■作品賞『バードショット』(ミカイル・レッド監督)

■国際交流基金アジアセンター特別賞 『ブルカの中の口紅』(アランクリター・シュリーワースタウ監督)

<日本映画スプラッシュ部門>

■作品賞『プールサイドマン』(渡辺紘文監督)

<WOWOW賞>『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(クリス・クラウス監督)

<SAMURAI(サムライ)賞>黒沢清監督 マーティン・スコセッシ監督

<ARIGATŌ(ありがとう)賞>新海誠監督 高畑充希 妻夫木聡 ゴジラ

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