トム・クルーズをスター扱いしない!エドワード・ズウィック監督が語る演出術|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
トム・クルーズをスター扱いしない!エドワード・ズウィック監督が語る演出術

インタビュー

トム・クルーズをスター扱いしない!エドワード・ズウィック監督が語る演出術

『ラスト サムライ』(03)以来、トム・クルーズと13年ぶりにタッグを組んだ『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(公開中)のエドワード・ズウィック監督にインタビュー。本作は、トムが元米軍のエリート秘密捜査官にして流れ者のジャック・リーチャーを演じた『アウトロー』(12)の続編だ。ズウィック監督が続編を手がけるのは初となったが、そこにはジャック・リーチャーの新たな魅力を引き出すという秘策があったようだ。

13年ぶりにトムと仕事をしたズウィック監督は「俳優としての熱意やエネルギー、100%全力を尽くすという姿勢は全く変わっていない」と太鼓判を押す。「でも、僕も彼もいろんな人生経験を積み、父親となって子どもを育ててきた。変わった部分があるとしたらそこかな。また、トム・クルーズといえば言わずと知れた一流のアクションスターだが、うっかりケガをしてしまうこともある。いまやトムは54歳だし、うっかり拳が入ってしまった時のダメージもこれまでとは違うはずだ。もちろん彼自身はそれを認めようとはしないけどね」。

本作のアクションではスタイリッシュさよりも無骨さや生々しさを求めた。「痛みをより感じてほしかったんだ。アクションによってキャラクターたちの感情をリアルに伝えたいと思ったから、パンチ1つキック1つに意味をもたせるような荒々しいアクションにしたかった。トムもきっと痛かったと思うけど、絶対に『痛い』とは口に出さなかった。でも翌日には大きなアザができていたりしたよ」。

今回のリーチャーは、元同僚ターナー(コビー・スマルダーズ)がスパイ容疑で逮捕されたことで軍内部での不審な動きに気づき、真犯人を暴こうと動き出す。また、リーチャーの娘だと名乗るサマンサ(ダニカ・ヤロシュ)が登場し、彼を困惑させる。

「ジャック・リーチャーはこれまで一匹狼として生きてきたにも関わらず、今回娘かもしれない女の子や、かつての同僚の女性と疑似家族みたいな関係性を強いられる。肉体的にはタフで無敵なリーチャーだが、ネンタル面はまた別問題だ。今まで慣れ親しんでいないものをぶつけてみたら、そこからさらにエモーショナルなドラマが作れるんじゃないかと思った。僕自身にも15歳の娘がいるが、超大作のメガホンをとることより、15歳の少女を育てることの方が大変なんだ(苦笑)」。

トム自身も10歳の娘スリの父親であるが、そのことはリーチャー役に少なからず影響を与えたのだろうか。「腕のある役者はたとえそういう経験がなかったとしても、父親役を演じられると思う。今回はそれよりも役者同士の化学反応が非常に面白かった。僕が思うに、トムは娘役のダニカの中に若い頃の自分を重ね合わせたんじゃないかと思う。なぜならダニカはバイクに乗りたい、空を飛びたい、スタントも自分でやりたい、常に学びたいというエネルギッシュな女の子なんだ。たぶんトムも15~16歳の時はそうだったんじゃないかな。本当に2人は相性が良くて、トムも現場で彼女にたくさんのことを教えたり、ふざけ合ったりして楽しんでいたよ。トムはきっと、15歳だったダニカが演じやすいような雰囲気を作り上げてくれたんだと思う」。

トムだけではなく、『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(94)のブラッド・ピットや、『戦火の勇気』(96)のデンゼル・ワシントン、『ブラッド・ダイヤモンド』(06)のレオナルド・ディカプリオなどの大スターたちも、ズウィック監督作で力強いオーラと実力を遺憾なく発揮してきた。彼らについて監督は「意外だと思うかもしれないけど、実は大スターというものはみんな演出されたがっているものなんだ」と考えている。

「僕は彼らと仕事をする時、いつも一役者としてキャスティングし、他の役者と同じ扱いをするんだ。しっかり準備をしてもらい、役柄のバックストーリーもちゃんと考えてもらうし、方言を話す必要があればそれもやってもらう。どんな大スターだって映画スターになる以前に、まずは『役者にやりたい』と思ってこの世界に入ってきたのだから。普段は大スター扱いをされているのかもしれないけど、僕は常にその部分を取り除くようにしている。実際、彼らもそういう誠実な扱いを求めているんだ」。

さらにズウィック監督はこう続ける。「彼らはルックスの良さや才能だけではなく、胸に内なる炎のようなものも秘めているから、監督としてはそれをいかに魅せられるかということが重要だ。それに偉大なスターであるほど監督と同じ視点を共有できるし、直感的にストーリーテリングをも考えることができる。すなわち一緒に力を合わせてやっていくことができるんだ」。【取材・文/山崎伸子】

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