出演俳優が惚れる!エログロ作風な国際派監督の魅力
井口昇をご存じだろうか? アメリカ資本で撮られた過激なアクション映画『片腕マシンガール』(07)で、海外にもカルトなファンを持つ監督だ。だが、以前から国内には“エログロ満載”の井口ワールドに心酔する者は少なくなく、俳優の中に彼の作品に出たがるファンが何人もいるという。
そんな彼の新作が完成した。タイトルは、スバリ『ロボゲイシャ』(10月3日公開)。殺人兵器に改造されたか弱い芸者が悪の野望を打ち砕く話で、前作の世界観そのまんまな、“2匹目のドジョウ狙い”丸出しの怪作だ。実際、YouTubeにアップされた海外版の予告編は、すでに70万アクセスを超えたという。
アクションあり、エログロあり、ナンセンスな笑いあり。そんな作風の監督だから、さぞブッ飛んだ人物だろうと思いきや、撮影現場で会った彼からは、温かな人柄がにじむ。自ら演じても見せる演技指導は懇切丁寧。役者の意見にも耳を傾け、柔軟な応対が印象的だ。
井口ファンの1人で、今回初めて井口組に参加したイケメン俳優・斎藤工は「現場には、井口さんのためならという空気があって、良い意味で憎めない方。一緒に仕事した人が皆、監督の人間性に惚れ込んでいく感覚が分かりました」と発言。(筆者が)監督に感じた印象は正しかったようだ。
終始、笑いの絶えない現場なのだ。その笑いの中心にいるのが監督自身。というより、本番中でさえ監督の背中が笑いをこらえて震えている。
ロボゲイシャ役で主演のグラビアアイドル・木口亜矢が「おかしいことを真面目にやるので、見ていて面白いし、やってる方も楽しい。現場でセリフをどんどん足していくんです。細かな笑いを」と井口作品の笑いの秘密を教えてくれた。
同じく改造される姉役の長谷部瞳も「台本を読む限り感動的なシーンなのに微妙に笑えたり、ビキニ姿の芸者がサングラスにヘッドフォンをして射撃訓練をしていたりと、細かな笑いが散りばめられている」と補足する。
2人とも、井口監督の人柄を信頼して、奇想天外な世界観に体当たりで挑んでいる。お尻から突き出た刀でチャンバラをし、下半身は戦車に早変わり。おまけに姉妹が合体までしてしまう! 俳優やスタッフに好かれる人柄こそが、過激な映画を生みだす秘訣だったわけだ。
芸者や富士山からガンダムまで日本的なものをパロディにしながら、姉妹の絆もしっかり描く新たな井口ワールドに会えるのは、もうすぐ。【取材・文/外山真也】