井口昇監督、『トランスフォーマー』でも驚かない観客に『ロボゲイシャ』で勝負!
『片腕マシンガール』(07)で世界を驚かせた井口昇監督の新作『ロボゲイシャ』(10月3日公開)は、芸者に富士山、忍者、天狗、ロボット等、日本的なアイテムをふんだんに盛り込んだ痛快アクション・コメディだ。再び海外マーケットに殴り込みをかける井口監督に話を聞いた。
「今回は、『片腕マシンガール』のような映画で、かつ海外でも日本でも通用するものというオーダーから出発した企画なんですよ。日本で一般公開できるように、なるべく血を流さないでほしいと。これは難しいですよね」。確かに。『片腕マシンガール』はバイオレンスとスプラッターが売りの映画だったから。
「主人公をロボットにしたのも、映倫的には人間でなければ、首を飛ばそうが体を真っ二つに裂こうがOKだから。つまり逆転の発想なんです」。『トランスフォーマー』(07)を見ても驚かない今の観客と勝負するには、そんな突き抜けた発想が不可欠だと語る。
では、奇想天外な井口ワールドの発想は、どうやって生まれるのだろう?「芸者が見たこともないような変形をしたり、口からチェーンソーが出てきたり、お尻から突き出た刀で戦うなど、僕の映画は僕自身が見たい映像の塊なんです。道を歩きながら常に、こんな映像があったら面白いのにと考えているので、よく『何、笑いながら歩いてるの?』と言われたりする(笑)」。
つまり、まず映像ありきで、物語は後付けなのだ。「映画って、理屈で考えちゃうとつまらない。エッシャーのだまし絵みたいに、滝が流れているのに源流が分らなくても、面白ければいいじゃないか!という発想です」。
そこで今回、意識したのが『007は二度死ぬ』(67)だった。「芸者がいて、地下鉄が地下組織のアジトに通じていて、美女たちが下着姿で整形手術を施している。ああいう、外国人が日本人を撮った映画って、日本人には絶対に作れない一種のユートピアですよね」。
そして『片腕マシンガール』との違いをこう説明する。「前回は外国人しか見ない前提で作ったのですが、多分、外国人と日本人には(“日本”という国に対する考え方の)温度差があると思う。芸者に一番関心がないのは日本人だし、富士山にだって行かない。日本人にもう一度考え直してほしかった」。
むしろ今回は、日本人を意識して作った映画だったのだ。単純に“2匹目のドジョウ”狙いと思ったら大間違い。『片腕マシンガール』とは一味違う、進化した井口ワールドに酔いしれてほしい。【取材・文/外山真也】