堺雅人の“つけ鼻”の計算された高さとは?
堺雅人が実在の結婚詐欺師に扮した『クヒオ大佐』(10月10日公開)。堺の演技力もさることながら、彼がトライした“つけ鼻”が、ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐という奇人をチャーミングに見せるのにひと役買った。そう、この計算されたつけ鼻こそ、本作のミソである。
でもなにゆえ、つけ鼻なのか!? それはクヒオ大佐が、実際に鼻を整形して“なんちゃってアメリカ人”を装った結婚詐欺師だったから。1964年に逮捕されたが、その偽りの経歴は、彼の厚顔無恥ぶりを雄弁に語っている。「36歳のアメリカ人、父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ」って、あなたは一体……!?
それにしてもこのつけ鼻、過不足ない絶妙な高さになっていると思う。興味深いのは、本作で初共演した松雪泰子が、つけ鼻をしてない状態の堺を見て、一瞬違和感を感じてしまったというエピソード。確かに鼻はしっくりきてて、かっこいいじゃないの! 多くの女性を泣かせてきた希代の結婚詐欺師ってことで、説得力ある“美貌”に仕上がったわけ!?
メガホンをとったのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)の吉田大八監督。つけ鼻にした理由として「アメリカ人になろうと思い詰める日本人のリアリティを出したかった」と聞けば納得がいく。つけ鼻には、愚かさゆえに憎めないクヒオの人間性が集約されているのだ。
とにかく鼻の高いクールな堺雅人は本作限定版なので、お見逃しなく!【Movie Walker/山崎伸子】
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