『カールじいさん〜』製作陣が語る“ピクサーの命”とは
『ウォーリー』(08)で大ヒットを記録したピクサーによる新作アニメーション『カールじいさんの空飛ぶ家』。共同監督のピート・ドクターとボブ・ピーターソンら製作陣が来日し、六本木リッツ・カールトンホテルにて記者会見を行った。
“夫婦愛”を描く作品ということで、夫婦愛の日本代表(?)としてアニマル浜口夫妻が飛び入り参加。浜口京子誕生秘話などを披露しつつ、和やかな中に気合いの入った会見になった。監督が本作の経緯を口にする。
ピート「78歳の、妻に先立たれた老人。彼が子どもの時に妻と会い、共に老いていって残される話。なんて他のスタジオに持っていったら、即……」
ボブ「却下」
ピート「だよね。だけど僕はこのアイデアを聞かせたボブが涙を流すのをみて、こいつはいけると思ったんだ」
ボブ「いや、そのときタマネギを刻んでてさ(笑)」
――と漫才コンビのように息のあった二人の監督。
ピクサーのリーダー、ジョン・ラセターがアイデアを聞かせたとき、ストーリーを聞かされただけでなんと号泣。『カールじいさんの空飛ぶ家』が出来上がった。
こんな泣きの物語である本作について、ドクター監督はこう話す。「子ども(時代)のカールは冒険に憧れていた。78歳になり妻を失い、暮らしの中で冒険を忘れていたと思って、亡き妻との夢を叶えようと飛び立つ。けれどカールは気づくんだ。妻との暮らしや、日常こそが冒険だったことに」
また、脚本のロニー・デル・カルメンは、テーマについて、「この作品には秘境が出てくるし、話す犬も出てくる。風船で飛ぶ家での旅もある。けれど僕らが描きたかったのは主人公の感情と人との関係、カールのエリーへの永遠の愛なんだ。カールは冒険の旅をしながら心の旅をするんだよ」と明かした。
製作のジョナス・リベラは、「けれど、すべてはストーリーのために。僕らが作るピクサー作品は、たまたまアニメーションという方法をとっているだけで“映画”なんだ。3Dも同じで、ストーリーテリングのためのツールにすぎない。ストーリーこそが、ピクサーの命、なのさ」と胸を張る。
見た目が派手で興奮を誘うだけの映画が氾濫する現在、家族で安心して楽しめるピクサー作品は貴重。アニメーションを越えたファミリー・ムービーである。家族で過ごすお正月映画の大本命である。【シネマアナリスト/まつかわゆま】