『ソウ』監督が新作復讐映画で“避けたかった表現”
『タクシー・ドライバー』(76)が好きな人にはぜひ観てほしい映画がある。それは、10月10日に公開された『狼の死刑宣告』という名の“ビジランテ”映画だ。
ビジランテ(vigilante)とは“自警団員”のこと。ビジランテ映画とは、わかりやすく言うと、法で裁けないような無法者に対して一般市民が実力行使に出る(復讐する)ような映画のこと。
実は本作、あの『ソウ』シリーズを手掛けたジェームズ・ワンが監督している。“ゲーム的殺人”から“ビジランテ”へ。なぜこのテーマを選んだのか、監督に聞いてみた。
「“復讐”というジャンルはもともと好きです。『ソウ』(04)や『デッド・サイレンス』(07)を撮った後、私はホラーの監督とみなされるようになりましたが、私自身は他のジャンルの作品も作りたいと考えていました」とワン監督は言う。
息子をギャングに殺された主人公ニック(ケビン・ベーコン)は、理不尽にも法の裁きを逃れそうな犯人のギャングに復讐の炎を燃やしていく。こののっぴきならない切迫した状況の主人公について、監督は「ニックの戦い方は鮮やかではないし、訓練されたものでもありません。彼は会社員であり、どのように戦うべきか、全く知りません。戦い抜くためにはどんなことでもやるんです」とコメント。
また、「私はどの役にも、“殺すことの快感”ということだけは表現させないよう、意識して努力しました」と演出ポイントも明かしてくれた。
“復讐”を扱った作品に、人々はある種の魅力を感じることがある。監督自身、どのようにとらえているのだろうか?
「復讐とは、“暗いファンタジー”だと思います。誰もが間違った行為をした人間には、やがて正義による報いがあることを願うものです。それは太古の昔から、あらゆる物語において人気のあるテーマです。現代においては人々の激しい感情によって、社会的規範というものがないがしろにされています。それはつまるところ、人間の本性なのかもしれません。だからこそ、それを制御するために法律がなくてはならないのですが」と分析した。
「スリリングでありながら現実的で、怖くて、醜くて、痛々しくしたいと考えた」という本作。デート映画ではないけれど、きっと心に残るものがあるはずだ。【Movie Walker/堀田正幸】