ヴィクトール・レベンギュウク
Tanase Scatiu
日本初のルーマニア映画で、動乱を背景に、男の野望と悲しい女の愛を描く、ルーマニアの文豪ドゥイリウ・ザムフィレスクの小説の映画化。監督はダン・ピッツァ、脚本はミフネア・ゲオルギウ、撮影はニコラエ・マルジネアヌ、音楽はアドリアン・エネスクが各々担当。出演はヴィクトール・レベンギュウク、クリスティーナ・ヌッツ、ヴァシーレ・ニツレスク、アンドレイ・クシキ、カタリナ・ピンティリエなど。
19世紀の末期。ルーマニアの大地に、貴族とブルジョアジーの対立が激化していた。歴史を誇るコマネスチャヌ一族の頭主ディーヌ(V・ニツレスク)の娘ティンカーツァ(C・ヌッツ)は、恋人がパリに留学中、豪族であるスカチュウ(V・レベンギュウク)に求婚される。スカチュウは、信望の厚いディーヌを嫌がっているにもかかわらず、ティンカーツァを自分と結婚させる様にディーヌに迫った。そこには愛はなく、コマネスチャヌ家の名声を望む男の欲望だけがあった。ディーヌはそれを見抜いていたが、一家の危機の為に、結婚に同意しなくてはならなかった。貴族との対立は、全土をゆるがすが如く激しくなり、そんな中、イタリアで医者になる為に留学していたマティ(A・クシキ)が帰国し、ディーヌのいとこのササ(C・ピンティリエ)と愛し合うようになる。コマネスチャヌ家の頭主となったスカチュウの権力は確固たるものになり、人民への迫害は増す一方だった。一方、ティンカーツァは愛のないスカチュウとの生活に苦悩する毎日が続く。そんなころ留学していた恋人が大臣の秘書として帰って来た。その夜ティンカーツァは自らの命を絶つ。そして、その頃、反乱の火が、スカチュウの邸を取り囲んでいたのだった。
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