タールク・アカン
Ali
監督のアリ・オズゲントルクが第一回東京国際映画祭で小津記念賞を受賞して得た製作資金を基に、次の映画製作を構想する監督自身の生活を描いた自伝的作品。脚本も監督自身。撮影はエルタンク・センケイ、照明はドーカン・アタカーンが担当。出演はタールク・アカン、サーカ・テカントほか。
ひとりの年老いた女が息子の手を握りながら喋っている。主人公の映画監督の祖母である。“祖母の声の映画を作りたい”と、監督のアリ(タールク・アカン)は、次回作のシノプシスの提出を義務づけられていた。25万ドルの賞金は製作投資なのだ。しかし周囲の人々はそうは思わない。アリが金持ちになって故郷に帰ってきたと信じている。父親(タルグート・サバス)は手に入れた金で自分のための家を買った方がいいと勧める。アリの妻(サーカ・テカント)は無関心だ。やりきれないアリは愛人(ナタリ・デュボーネ)に電話をする。彼女の家には泊らずに帰るアリ。彼は脚本家と話し合う。映画の構想をねりあげなければならない。“青年時代”をイメージする。オレンジの果樹園、祖母--。その祖母は数年前、独立戦争の時、敵の兵士にはロールパンを与えた。隣人の誰もが彼女に石を投げつけ、敵を助けたといって非難した。映画館、黒い蒸気機関車、アンカラの雪原--製作会社から新しい映画の題材を決めてほしいと催促の電話が入った。アリは何を撮ればいいのか分らなくなっていた。愛人からの手紙をみつけた妻はヒステリックに位き叫んで彼の許を去ろうとする。「置き去りにしないでくれ」と頼むアリ。アリは撮影隊と一緒になった。「自分の映画を作るんだ。自分の人生についての映画を」--広大な荒野。フィルムが溢れる。火が起きる。火を消そうとするが、フィルムは燃えつづける。祖母のアラビア語の歌がこだましてくる。何もない平原をアリは歩いていく。
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