ミシェル・シュボール
Bruno
ジャン・リュック・ゴダールの監督・脚本・台詞になるアルジェリア戦争時代の青春を描いたもので、「勝手にしやがれ」に次ぐ彼の長篇第二作。撮影はヌーヴェル・ヴァーグ派の名手ラウール・クタール、音楽はモーリス・ルルーが担当した。出演は、これが第一作だったアンナ・カリーナ。演劇畑より、この作品で初めて映画に主演し、その後「何がなんでも首ったけ」で人気を得たミシェル・シュボール。ほかに吉田喜重監督の「さらば夏の光」にも顔をみせているポール・ボーベなど。
ブルーノ(M・シュボール)はカメラマンである。ジュネーブでの仕事を終え、フィルムを通信社にとどけたあと、友人と出会った。彼は素敵な女の子を紹介するという。その女の子ベロニカ(A・カリーナ)を、ブルーノは一目で気にいってしまった。ところがまもなく、彼にスパイの仕事がまわってきた。というのは、ブルーノは、カメラマンであると同時にOAS(フランスの秘密軍事組織)の仕事をもしていたからである。そして、こんどの仕事は、常々OASを激しく攻撃しているスイスのジャーナリスト、パリヴォダを暗殺することだった。ブルーノは拒否したが、彼らはブルーノが脱走兵だったことをネタに実行をせまった。ブルーノは逃げ出した。そしてベロニカのもとへ。彼女の写真を撮りまくり、小さなホテルへと行った。しかし、OAS側は、どこまでもブルーノに暗殺実行をせまる。実行しなければ彼自身の身の破滅、というところまで追いこまれてしまった。彼はひきうけた。そしてパリヴォダをつけまわしたが、どうしても射つことが出来ない。その結果、OAS側の裏切者として、こんどは自分がOAS側から狙われる身となってしまった。同時にFLN(民族解放戦線)側からも危険人物として狙われて捕えられてしまったのである。だがベロニカの手引で脱出。そしてベロニカのアパートにかくれた。二人は、愛しあっていたのだ。だがベロニカが意外なことを告白した。彼女はFLN側のスパイであり、ブルーノがOAS側と接触したら、すぐそれを知らせるのが任務だという。しかし今や彼女は、彼らを裏切ってブルーノと共に国外脱出を決心するのだった。だが、決行される前に、二人はOAS側につかまってしまった。愛するベロニカを助ける方法はただひとつ、ブルーノがパリヴォダを暗殺することである。彼は撃った。引き金をひく心の中に、冷たい風が吹きぬける。まだ生きている以上、その限りにおいて、これからは、うまく年をとることが肝心なのだ--こんな思いがブルーノの心をよぎるのだった。
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