アレクサンドル・チェレドニク
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ドフトエフスキーの『罪と罰』をはじめとする19世紀ロシア文学の精神世界をモチーフにした世紀末的雰囲気の漂うドラマ。監督・脚本のアレクサンドル・ソクーロフは、70年代後半から劇映画、ドキュメンタリーを多く手がけていながらことごとく検閲にあい、公開を禁止されていた。87年のペレストロイカ以降やっと彼の作品が人の目に触れるようになり現在では国際的にも注目を集めている。作品に「マリア」「孤独な声」『モスクワ・エレジー』「セカンド・サークル」「ロシアン・エレジー」などがある。撮影はアレクサンドル・ブーロフ。音楽にはグスタフ・マーラーやO・ヌッシオなどの曲が使われている。出演は、主人公の青年にアレクサンドル・チェレドニク、少女にエリザヴェータ・コロリョーヴァ、役人にセルゲイ・バルコフスキー。
霧に濡れそぼったように古びた建物が建っている。その建物の影が水面に浮かび、白い鳥が飛び交う。波止場の階段には人々が佇んでいる。アーチ状の地下通路のような街路を主人公の若者(アレクサンドル・チェレドニク)が歩いている。金を無心にくる男をかわしているうちに、嬌声をあげた女たちの渦に巻き込まれてしまう。遠くでは、老婆殺しのニュースに人々がざわついている。またバベルの塔のような建物のあちこちから飛び降りをはかっている人々もいる。その先は、水の底に建つ水中都市のようだ。若者が自室の別途に横たわっている時、少女(エリザヴェータ・コロリョーヴァ)が訪ねてくる。少女の父親が卑劣な輩どもに殺され、その現場を目撃した彼の元に会いに来たというのだ。若者はまた役人の事務所で、殺された老婆の遺品に関する書類にサインしている。事務所を出た若者は遠くに恐竜のような彫像の見える通りを歩いている。ぼんやりして歩いていた彼は、肩をぶつけてしまった男につるしあげを食う。若者は少女の家を訪ねる。彼はそこで老婆殺しの事実を打ち明ける。神を信じて救いを求めなさいという彼女に、神などいないと言葉をはき捨てる若者。外に出た彼は恐竜の彫像の下に入り込む。その姿は胎児のようで身をかがめながらじっとして動かなかった。
監督、脚本
製作
撮影
音楽
美術
編集
録音
字幕
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