ババク・アハマッドプール
Ahamad
友だちのノートを間違って家に持ち帰ってしまった少年が、ノートを返すため友だちの家を探し歩く姿を描いた、子供についての映画。脚本、編集、監督はアッバス・キアロスタミ。一九八七年のテヘラン映画祭で最優秀監督賞などを授賞し、彼の名はイラン国内で不動のものとなり、八九年のロカルノ国際映画祭で五つの賞を総なめにし、イラン映画の水準の高さを世界に示した。撮影はファルハッド・サバ。素人しか起用しないことで知られるキアロスタミは、この作品でもカスピ海に近い小さな村の子供たちを使っている。主人公の少年にはババク・アハマッドプール、隣の席の少年には、その弟のアハマッド・アハマッドプールが扮している。キネマ旬報ベストテン第八位。
イラン北部のコケール村の小学校。あるクラスで先生(ホダバフシュ・デファイ)がみんなの宿題を見ていた。モハマッド・ネマツァデェ(アハマッド・アハマッドプール)は宿題をノートにしないで紙に書いてきたため三度も叱られている。「今度同じことをしたら、退学だ」と怒る先生。隣の席のアハマッド(ババク・アハマッドプール)が家に帰ってみると、なんとモハマッドのノートを自分のと一緒に持ってきてしまっていた。早く返さないとモハマッドが宿題をやれず、退学させられてしまう、と思ったアハマッドは母さん(イラン・オタリ)に事情を説明するのだが、「早く宿題を済ませて、パンを買いに行ってきて」と聞く耳をもたない。何度説明してもとりあってくれないのでアハマッドは母さんが目を離した隙にモハマッドのノートを持って友だちの住む隣のポシュテ村まで走る。丘を越え、やっと着いたものの、誰も友だちの家を知らない。いろいろな人に聞いて、やっと友だちのいとこの家にたどりつくが、その子は五分前にコケール村に行ったという。あわてて来た道をまた走るが、村に着いた途端おじいさんに見つかり、煙草を家から取ってこいと命ぜられる。アハマッドが煙草を見つけられず戻ってくると、その場にいた男の人がノートを一枚くれといって、勝手に破ってしまう。男がネマツァデェという名を口にしたので、「モハマッド・レザのお父さんですか」と聞くが、男は答えもせず、ロバに乗ってポシュテ村のほうへ行ってしまった。それを追ってアハマッドはまた走るが、その男の息子はモハマッドではなかった。その子に教えられ物知りの老人を訪ね、老人と暗い道を歩いて友だちの家へ行くが老人が教えてくれた家は違っていた。家に帰ったアハマッドは夕御飯も食べる気になれず、二人分の宿題を始めた。翌日、先生が宿題を点検する時間になっても、アハマッドは現れない。モハマッドは今にも泣きそうな顔をしている。とその時、アハマッドが教室に入ってきた。「やってあるから大丈夫」とモハマッド・レザにノートを渡す。先生はノートを見て一言「よくできました」と言う。
監督、脚本、編集
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録音
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