勝新太郎
寺西正毅
次期政権を狙う首相候補のもくろみが、夫人から秘書に宛てたラブレターによって崩れていくさまを、謎の死をからませ権力に群がる人間たちを介在させて描く。松本清張原作の同名小説の映画化で、脚本は「逃がれの街」の古田求と、本作品で監督も兼ねている「疑惑」の野村芳太郎の共同執筆。撮影も同作の川又昂がそれぞれ担当。
政権を握る改憲党内第二派閥領袖・寺西正毅は、現首相、桂重信から政権の禅譲を受け、この秋に首相の座に就くであろうことは衆目の一致するところであった。寺西を裏で支えているのは、夫人である文子と秘書の外浦卓郎である。外浦は財界の世話役である和久宏に、寺西派とのパイプ役として送りこまれ、四年前から寺西の私設秘書となっていた。寺西邸から政治献金のバックペイの金を、和久のもとへ届ける使者として立てられた銀座のクラブ「オリベ」のママ・織部里子が、その金を奪われるという事故を起こした時、警察に手を回して闇から闇に葬ったのも外浦の力であった。前首相・入江宏文が急死し、政局は秋の総裁選に向け、俄かに動き始める。桂がひき続き政権を担当する意思を見せたのを受けて、外浦と和久、そして和久に囲われている里子は京都へ飛び、関西財界の有力者、望月稲右衛門から二十億の融資を引き出した。第三派閥板倉派抱き込みのための工作資金である。桂派と寺西派になる政権争いが、日ごと激しさを増すなか、外浦が和久の経営する東南アジアの会社に招かれてとの理由で突然辞意を表明した。出発間際東大の後輩にあたり、政治家相手の代筆業をしている土井伸行を訪ねた外浦は、土井に個人名義の貸金庫の管理を依頼し、自分にもしものことがあったら、中身は自由に使えと告げる。外浦が外地で自動車事故死したことを新聞で知った土井は、すぐに貸金庫を開けた。中身は、文子と外浦の二年間に及ぶ不倫の恋の記録、文子自筆のラブレターの束であった。板倉派が、次第に奇妙な動きを見せ始めた。川村正明率いる「革新クラブ」に照準を合わせ、かねてから川村が熱を上げていた里子を使って川村を自派の傘下におさめたのである。土井が自宅で惨殺死体として発見された。新聞に過激派の犯行声明が載り、警察は内ゲバ殺人としてこの事件を処理するが、裏で板倉派が動いていた。桂派に寝返った板倉から「あと一期待たないか」ともちかけられた寺西が見せられたのは例のラブレターだった。帰宅した寺西は文子を責めるが、後日、桂を支持することを発表した。そして、第二次桂内閣誕生。寺西邸では、少数の記者を相手に怪気炎を上げている寺西の姿があった。
寺西正毅
寺西文子
織部里子
波子
川村正明
鍋屋健三
外浦卓郎
外浦節子
土井伸行
佐伯昌子
和久宏
望月稲右衛門
桂重信
板倉退介
三原伝六
星さゆり
川村良江
大串
監督、脚本、製作
脚本
原作
製作
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
録音
助監督
スチール
[c]キネマ旬報社