中村嘉葎雄
脇坂篤
山田風太郎の原作「棺の中の悦楽」を「天草四郎時貞」の大島渚が脚色・監督した。撮影は高田昭。
三流の広告会社で働く安サラリーマン脇坂篤のところに、ある日篤がかつて家庭教師をしていたころの教え子稲葉匠子から結婚招待状が送られてきた。--篤はいつの日からか、匠子を密かに愛し続けてきたのだ、そしてそれ故に、匠子には知らせず、彼女がまだ小字生のころ暴行を働き、未だに匠子を脅迫し続けている青年を汽車のデッキから突落し殺してしまったのだ--。そして今、篤が得たものは、この一通の招待状であった。その夜酔って帰った篤は、以前、篤の犯行を目撃したという汚職官吏速水が、彼が出所するまでを条件に、篤に無理矢理に預けていった三千万円入りのトランクを開けた。速水が横領した金九千八百万円の一部であった。速水が帰ってくる一年半の間に、この棺にも似たトランクにつまった三千万円の悦楽をくみつくそうというのだ。一年半後には自らが、その棺の中に身を横たえればいいのだ。篤は大金をばらまいて次々と女を貪り、替えていった。打算的なバーのホステス眸、病身の夫を持ちながらアルサロで働く被虐的な女志津子、冷感症のインテリ女医圭子、言葉が不自由のうえ知的障害者で、異常な性欲を持つ街娼マリ。そして金を使い果たし、期日もあと十日ほどにせまったある日、篤はマリのヒモで刑務所で速水と同房だったという工藤に、速水が獄死したことを聞いた。二人は速水の残していった金をめぐってもつれ合い、工藤は間にわけて入ったマリの拳銃で射殺された。そんな折も折、篤は偶然匠子と再会した。匠子は、倒産した夫を救うためにと、篤に金を無心した。匠子は今までの篤の派手な生活を知っていたのだ。だが今の篤にはどうすることも出来ず、事の一切を匠子に告白した。匠子は去り、一人とり残された篤の手に手錠が鳴った。警察に篤の犯罪を密告したのは匠子であった。篤の顔が悲しみと怒りに赤く燃えていた。
脇坂篤
稲葉匠子
疇
志津子
圭子
マリ
青年
速水
桜井
花輪組1
花輪組2
花輪組3
江城
刑事
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